[口演6-4] 急性期病棟から地域包括ケア病棟への転院連携パスの構築
【背景】近年、後期高齢者や多疾患併存患者の増加で、入院患者の退院調整が難航し、平均在院日数が延長する傾向にある。A病院の平均在院日数は、予定入院が8.1日であるのに対し、緊急入院は15.1日と長く、急性期医療を必要とする患者の病床を確保できないという課題にも繋がっていた。一方、地域包括ケア病棟をもつ近隣医療機関から、空床が多いため患者を紹介してほしいと要望を受ける状況であった。2024年4月に控えている診療報酬の改定に際し、「円滑な介護施設・在宅への退院、後方病院への転院を推進することが重要だ」とする意見が多数出ており、急性期病棟から地域包括ケア病棟への速やかな転院の仕組みの整備が大きなテーマとなっている。【目的】各施設の病床機能を最大限に生かすため、協力医療機関と連携し早期に地域包括ケア病棟へ転院するための仕組みを構築する。【実践内容・方法】202X年8月よりB病院と、急性期病棟から地域包括ケア病棟への転院を目的とした連携パスとして、「手つなぎ連携パス(以下手つなぎパス)」について検討し、同年10月より整形外科疾患の保存治療を中心にトライアルを実施した。協力医療機関が1施設のみでは患者家族の意向に添えない可能性も考慮し、並行して他の医療機関にも協力を依頼した。近隣区内で1ヶ所以上の協力医療機関を確保し、翌年1月には6医療機関と運用を開始した。同時に尿路感染症と誤嚥性肺炎も対象疾患に加え、オンラインの転院調整で「手つなぎ」を合言葉に、DPC入院期間Ⅱ内での転院を推進した。【結果】運用開始後5ヶ月で、保存治療の整形外科疾患7名・誤嚥性肺炎3名・尿路感染症1名・心不全1名の計12名が転院した。手つなぎパス運用前に、整形外科疾患保存治療17.5日・誤嚥性肺炎22.5日・尿路感染症11.4日であった平均在院日数は、手つなぎパス適用12症例では整形外科疾患保存治療15.1日・誤嚥性肺炎14日・尿路感染症13日と、誤嚥性肺炎で8.5日の短縮がみられた。一方で尿路感染症は在院日数が1.6日延長しており、整形外科保存疾患は2.4日の短縮に留まった。【考察】急性期病棟から地域包括ケア病棟へ速やかに転院するためには、患者家族の意向を尊重しつつ、医療機関双方の利益を考えた仕組みが必要である。手つなぎパスの構築は、患者の意向と地域の限られた医療資源を効果的に利用した転院調整を行ううえで有用だったと考える。しかし、協力医療機関と実績症例数が少ないため、平均在院日数への影響は明らかとは言えない。【実践への示唆】手つなぎパスの運用は、平均在院日数の短縮に一定の効果が期待できるものの、実績が少ないため更なる推進と検証が必要である。今後顔の見える関係を深化させた「目を見て話せる関係」の構築により、地域関係機関との連携を更に強化していきたい。連携強化で協力医療機関を拡大し転院実績を積む事で、「地域完結型医療」の実現に、一歩近づけるのではないかと考える。