[口演6-5] 看護記録一部テンプレート化による残業削減の取り組み
【背景】 時間外労働の削減は職員のワークライフバランスの充実だけではなく、電子カルテに向かう時間の減少と、患者ケア時間の増加につながると考える。そこで時間外業務の多くを占めると推測した看護記録の形式を見直し、記録時間を短縮することで時間外労働の削減を目指した。【目的】 A病院地域包括ケア病棟における業務終了時刻以降の時間外に行った業務の割合を抽出し、時間外労働業務における看護記録時間の割合を明らかにする。また、看護記録の文字数が時間外労働の延長に影響していることを明らかにする。そして、セルフケアや日常生活動作の観察記録が行えるテンプレートを作成・導入する。叙述形式の記録をテンプレートに置き換えることで、時間外労働時間が減少するか検証する。【実践内容・方法】1 研究対象:A病院地域包括ケア病棟看護師14名。2 データ分析方法:1)対象者の時間外労働業務の割合をグラフ化する。2)「看護記録文字数(患者1人に対して、対象看護師が記録する平均文字数)と時間外労働時間」をグラフ化し関係性を確認する。3)テンプレート記録は、地域包括ケア病棟において観察評価の中心となる、セルフケアや日常生活動作の観察を選択して記録が行えるテンプレートを作成し導入する。4)1か月の時間外労働時間について、テンプレート記録導入前後の比較を行う。A病院倫理委員会の承諾を得て研究を開始した。また、対象者に研究目的及び方法、自由意思での協力、辞退や中断により不利益が生じないこと、公表するデータは個人が特定されない配慮を行うことを文章で説明し同意を得た。【結果】1 A病院地域包括ケア病棟における時間外労働の64%は記録であった。2 テンプレート導入前、「患者1人に対して、対象看護師が記録する看護記録の1日平均文字数」が多い看護師ほど時間外労働が長いという結果となった。3 テンプレート記録導入前後の看護師個々の時間外労働時間の比較では、減少率は17%であった。【考察】 看護師の時間外労働の削減は患者の安全や職員の健康を守ることにつながり、管理者が早急に対応すべき近々の課題である。今回、看護記録入力文字数が多いほど時間外労働が長いという関係性を証明できたことで、時間外労働削減という目的を持ってテンプレート記録を導入した。その結果、時間外労働を削減する効果はあったといえる。しかし、時間外労働の削減率は17%であったが、テンプレート導入後も平均時間外労働は長く、19.3時間であり十分な効果があったとはいえない。さらに看護記録以外の業務改善も求められる。【実践への示唆】 看護師の時間外労働削減対策は、看護記録以外にも業務改善、労働環境改善などあらゆる方面からの対策が必要だと考える。看護師の時間外労働の問題を重要視し、看護師を取り巻く労働環境や業務の改善と共に、テンプレート化の拡大と看護記録の適正さ追求していきたい。