[口演8-1] 看護管理者のマネジメント能力の現状と課題
【緒言】A病院(中規模病院)では、看護管理者の背景や看護職の経歴も様々であることから、マネジメント能力の現状を把握し、課題を見いだすことは意義があると考える。 先行研究では、看護管理者が効果的に役割を果たすキーコンピテンシー獲得モデルの開発と効果を見る研究はあるが、キーコンピテンシーモデルを用いて施設内の調査を行なっている研究はない。さらにベンチマークと比較し、今後の課題を明確にする。【目的】A病院における看護管理者のマネジメント能力を調査し、現状と今後の課題を明確にする。【方法】本研究の対象は、看護師長、主任・副主任の職位にある看護師とする。A病院に勤務する看護管理者36名(看護師長11名、主任15名、副主任10名)を対象に質問紙調査を実施した。調査内容は、看護管理者が役割を効果的に遂行する能力測定として開発された「看護管理者のキーコンピテンシー尺度(金子ら,2020)」を用いた。 データ分析は、基本統計を算出後、職位別比較をマンホイットニーのU検定、看護管理経験年数別をボンフェローニ法で比較した。また先行研究の全国の看護管理者データとの差異を算出した。有意差は5%水準とした。統計解析にはExcel統計とSPSS ver.28(IBM社)を使用した。 倫理的配慮として、A病院倫理委員会にて、本研究の承認を得た。(承認番号 20240401)【結果】調査票の回収率は94.6%で有効回答34.名(有効回答率97.1%)だった。 キーコンピテンシー平均値は、状況認識17.3点、メタ認知19.4点、自己管理16.5点、キャリア支援14.3点、意思決定16.2点だった。職位別の2群比較では「自分のなりたい姿を明確に持ち、その実現に向けて何が必要か考えて行動している」(P=0.0378)と「部下のキャリア支援を確認している」(P=0.0049)で看護師長と主任・副主任の差が見られた。また看護管理経験年数別比較は、有意差はなかった。 ベンチマークと比較したところ、看護師長のメタ認知が4.2点と高く、自己管理が1.6点低かった。主任・副主任はメタ認知が2.3点と高く、自己管理は3.0点、キャリア支援1.8点低かった。看護管理者経験年数はすべての年数で自己管理が低く、10年未満の者はキャリア支援も1.7点低かった。【考察】A病院の看護管理者は、自身のビジョンを明確化し、役割遂行へ努力する自己のマネジメント、また部下のキャリアプランの支援や目標達成の評価について課題がみられる。これは、先行研究との関連からA病院では認定看護管理者研修受講者が少ないことも影響していると考える。【結論】A病院のデータは主任に副主任も含まれ単純比較はできないが、職位や看護管理者経験年数からみた管理スキルの一部が把握できた。