[口演9-5] コロナ禍における実習指導の取り組み
-病棟看護師の不安への解消-
【背景】新型コロナウイルス感染症の影響により看護学生(以下学生)の臨地実習の日数短縮や中止が余儀なくされている。A病棟では実習指導者講習会に参加した臨床実習指導者(以下指導者)をリーダーとし、病棟看護師も学生指導に関わる。しかし、病棟看護師から「コロナ禍で患者と関わる機会が制限された学生を指導することが不安だ」との声が聞かれた。指導者として、病棟看護師に対しコロナ禍における学生への不安を取り除くことが有意義な実習を提供するために急務と考えた。そこで病棟看護師がコロナ禍で影響を受けた学生を理解し、個に適した方法を指導者と共有することが不安の軽減に繋がると考え実践した。【目的】病棟看護師がコロナ禍における学生の全体像を把握し、さらに個の理解を深めることで指導に対する不安軽減に繋がることを目的とした。【実践内容・方法】実践者独自に作成したコロナ禍の特徴を踏まえた学生への関わり方の資料を用いた。実践者が5年目以上の病棟看護師9名に対し、実習期間中に1対1で20分対面式でOJTを1回実施。さらに指導者と病棟看護師間で学生の進捗度や指導内容の把握のために申し送りノート(以下ノート)を活用し情報共有する。実習終了後に実践者独自に作成した質問紙、自由記載欄を含む無記名式のアンケート調査を実施し、その結果を単純集計し分析する。B病院の研究倫理審査委員会の承認を得た。(承認番号2023013)【結果】アンケートより、問1:OJTは効果があった、問2:OJT後の指導方法に変化があったとの問いに全員が「はい」と回答した。自由記載では「指導方法が理解出来た」「自分自身の成長に繋がった」と指導方法の習得に繋がる意見が得られた。問3:ノート活用は効果があった、問4:ノート活用後の関わり方に変化があったとの問いに全員が「はい」と回答した。自由記載では「レディネスに合わせた指導が出来た」「他指導者のコメントを見て新たな視点の発見があった」「指導者と病棟看護師の情報共有となった」と個の理解に繋がる意見が得られた。【考察】OJTの実施はコロナ禍における学生の特徴を理解することに繋がり病棟看護師の不安解消を促した。ノートの活用は、学生の進捗度やレディネスの把握を可能にし、個別的なサポートを可能にしていた。そして病棟看護師は、ノートを介して指導者の指導方法や自分では気づかない側面から学生を捉えることができ、指導者と病棟看護師との情報共有の媒体にもなっていた。指導者側の教育体制の構築は、病棟看護師の不安を無くしコロナ禍の影響を受けた学生への包括的な実習指導を可能にしていた。【実践への示唆】病棟看護師は指導対象を理解することで漠然とした不安は解消され、今後様々な有事においても実習受け入れ側の教育体制を整えることで、有意義な実習を提供できることが示唆された。