[ポスター1-6] 電子カルテ導入に伴う不安と対策の検討
【緒言】国がICT化を進める中、介護医療院における電子カルテ導入に関連した研究は、まだ少ない。介護医療院の職員は、高齢化しICTに伴う抵抗感が強く、計画的に対策を講じないと混乱を招く可能性が高い。そこで、電子カルテ導入がスムーズに進行するための示唆を得るため研究に取り組んだ。【目的】A介護医療院(以下A施設)における電子カルテ導入に伴う職員の不安を表出し、効果的な対策を検討する。【方法】対象者は、A施設に勤務する看護職・介護職で1回目調査28名、2回目調査26名とした。調査期間は、202X年12月~202X年3月とした。調査内容は、「電子カルテ導入に伴う不安」とし、質的統合法(KJ法)で分析した後に研究者間で対策を検討した。その後、対象者に重みづけシール(1点~5点)を配布し、該当対策の項目にシールを張ってもらった。対策立案前後に10段階で不安を数字で評価し、t検定を行った。有意水準は、5%未満とした。B病院の研究倫理審査委員会の承認を得た(承認番号A-03)。質問紙内の研究同意の意思表示と投函をもって研究に同意したとした。【結果】質問紙回収率は、1回目89.3%、2回目65.4%であった。平均経験年数は、19.9年であった。質問紙から取り出されデータ化されたラベルは、「見ていないため、どこが不安かわからない」「作業が出来ず、残業や仕事量が増えないのかが不安」「研修で教えてください」「PCは何台用意されるのか」「サイバーテロ」等の32枚であった。それらのラベルの類似性によるグループ編成は4段階にわたり、その結果6つのシンボルマーク〈事柄:エッセンス〉に統合された。シンボルマークは、〈見えない不安:職種や経験値による価値観の違い〉〈紙カルテに慣れている人の不安:システムエラーへの対応と効果的なPC操作への期待〉〈仕事量の増大:不慣れなパソコン操作による手技獲得への不安〉〈知識と技術の習得:研修体制の構築〉〈必要物品の準備:パソコン台数の確保〉〈情報安全管理:サイバーテロ対策やセキュリティ管理の重要性〉であった。対策の上位は、人員確保79点、操作教育の強化59点、困った時に相談できる環境56点、業務改善41点、ゴールの設定(1年後を目標)21点であった。10段階評価による不安の平均値は、対策立案前、5.4点で対策立案後は6.8点で有意差は認めなかった。【考察】新規事業の導入は、誰もが不安や抵抗感がある。その中で、その不安を表出し、対策を職員全体で考え動機付けていくことは重要である。文献においても「導入効果があった成功事例では、システム導入前の構成員教育、業務分析が十分にされている。」と述べられているため、本研究とも一致した。【結論】電子カルテ導入に伴う不安は、KJ法で分析し、6つのシンボルマークが抽出され、操作教育や業務改善は効果的な対策であった。今回は、1つの施設のデータのみで、一般化することは難しいが今後、研究結果を実践し検証していく。