[ポスター17-1] 回復期病棟における患者家族の病状理解を深める関わり
ーコルブの経験学習モデルを用いた家族指導を通してー
【背景】A病院では72%の患者が退院先を自宅としている。回復期リハビリテーション病棟における看護師は、自宅退院に向けた支援を行うことが重要な役割の一つである。コロナウイルスが流行後、患者と家族の面会の機会は制限され患者の病状において家族と医療者の間に認識の差を感じる事が多く、退院後の介護生活を十分にイメージできずに退院となるケースが多いと感じていた。そこで、入院中に家族が病状理解を深め、介護に備えるためのアプローチが必要と考えた。本研究では家族指導を学習の一環と捉え、教育の場で用いられるコルブの経験学習モデルを使用し病状理解を深める関わりを行うことを目的とした。コルブの経験学習モデルは4つの過程(具体的経験→内省的観察→抽象的概念化→能動的実験)を繰り返すことで学びを獲得するモデルである。これらを活用することで家族の病状理解を深める関わりの有効性を検証できると考えた。【目的】コルブの経験学習モデルを用いた家族指導を行うことで家族の病状理解を深められる。【実践内容・方法】実践報告。自宅退院を希望し、介助量が増えた状況での退院が想定される患者・家族を2組選定し、コルブの経験学習モデルを用いて家族指導を実施する。家族指導中の家族の発言、表情、反応をフィールドノートへ記載しコルブの経験学習モデルに関連した家族の反応を抽出した。【倫理的配慮】本研究はA病院倫理委員会の承認を得た。(2023A003)対象者に研究参加は自由意志であること、辞退の自由、それに伴う不利益は生じないことを説明し同意を得た。【結果】a氏家族は介助量が増えた事に理解が得られなかったが、2回目の介助指導時にはトイレ誘導が必要である事に気付きが得られた。b氏家族は入院時には現状の身体機能に楽観的な発言が聞かれていたが、2回目の指導時には介助の必要性を理解する発言が得られた。【考察】具体的経験で患者の状態を見学するのみではなく、家族へ内省的観察と抽象的な概念化の項目を問うことが重要であったと考える。内省的観察では意図的に入院前後の変化を聞く事で家族自身の気付きとなった。抽象的な概念化では退院後の生活のイメージを促し家族自身に考えを問う事で、内省によって得た入院前との変化を結びつけることが理解を深めることに繋がった。今回は病状理解を深めることに重点をおいていた為、介助手技は見学に留まり積極的な実践に至らなかった。しかし学習プロセスの中で家族の認識に変化がみられ、病状理解を深める為に有用であった。学習と病状理解を深めることが必ずしも同義ではなかったが、病状理解を深める為に必要なプロセスだったと言える。【実践への示唆】今後の看護師の家族への関わりとして、患者の状態を口頭説明のみではなく、実際に家族が介護を体験すること、意図的に家族自身に考えるよう促すことで、病状理解を深められるよう関わっていきたい。