第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

Presentation information

ポスター

ポスター17群 認知症の人への支援

Fri. Sep 27, 2024 3:45 PM - 4:45 PM ポスター会場 (展示ホール)

座長:矢野 亜紀子

[ポスター17-2] 急性期病院における認知機能低下のある高齢者への看護実践

患者の個別性へ焦点を当てた関わり

関 直純 (順天堂大学医学部附属静岡病院)

【背景】 認知機能低下のある人にとって、入院生活はせん妄などの弊害の存在が知られ、早期から本人の生活歴に合わせた看護の提供が求められている。今回、急性期病院入院中に生活習慣を活かした関りを行うことにより、その人らしさを活かした入院生活を送ることが出来たため報告する。【目的】認知機能低下のある患者に対して、個別性を取り入れた看護を提供することで、安心して入院生活を送ることができることを介入の目的とした。【実践内容・方法】筋萎縮性側索硬化症で入院したA氏60代男性。日常生活動作は自立していたが軽度認知機能の低下があり。表情が堅く、うそをつかれるなどの発言や、早朝覚醒し歩き回る様子が見られた。担当看護師はA氏が安心した入院生活を送ることが出来ていないことを看護問題として取り上げ介入を開始。情報収集により几帳面で自律心が強いこと、早朝から就業する職人であったことや、ボランティア活動を積極的にしていたことがわかった。 集めた情報を中心に、病棟看護師や理学療法士と相談し、自宅で使用していた時計やカレンダーの設置とともにA氏が書き込める予定表の作成や役割獲得など、入院前の生活を取り入れた看護計画を立案し、繰り返しカンファレンスを開催した。 倫理的配慮として個人が特定されないように匿名化とし、発表に際してA大学病院倫理審査委員会の承認を得た。【結果】 介入1日目、予定表を自ら書き込む様子が見られた。予定を忘れてしまうこともあったが見返すことで確認できていた。介入4日目以降、A氏から「役に立ちたい」との意欲が聞かれ、軽作業を取り入れた。予定表にはA氏が実施したこと以外に疾患への不安も記載されていた。過去の予定表を読み返し、満足気に笑顔を見せ、これまでの自身の人生や、今後の希望についてもスタッフへ話す様子が見られるようになった。【考察】 A氏の見当識を補う介入として、使い慣れた時計やカレンダーを設置することで、見当識を保つことが出来たと考える。A氏は一日の予定が決まっていないことに不安が生じていたため、予定表を作成し繰り返しA氏と関わることで、A氏の生活で予定表を活用することが習慣となり、安心につなげることができたと考える。またA氏の性格傾向と生活歴に着目した軽作業の導入により、A氏の役に立ちたいという欲求を満たし、入院生活の中に役割を見出しA氏が安心して生活できる居場所を確保することに繋がったと考える。【実践への示唆】 本事例を通して改めて急性期病院であっても、患者の性格や価値観、生活背景を整理し、関わり方を工夫することで患者のニーズが把握でき、療養生活をより充実したものへ変化させることができると理解できた。認知機能低下の有無に関わらず、その人らしく生活できる環境を提供する必要がある。今後は意識的にコミュニケーションを行い、得られた情報からケアを充実させていきたいと考えた。