第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

Presentation information

ポスター

ポスター17群 認知症の人への支援

Fri. Sep 27, 2024 3:45 PM - 4:45 PM ポスター会場 (展示ホール)

座長:矢野 亜紀子

[ポスター17-3] 認知症高齢者の栄養状態改善に向けた関わり

NSI評価表を用いた聞き取り調査の実践

引地 美織, 井筒 香里, 高麗 美代子, 森 尚子 (徳島県立中央病院)

【背景】大腿骨近位端骨折により入院する患者の多くが認知症高齢者であると言われている。高齢者は低栄養を起こしやすく,低栄養状態は術後の治癒率,合併症発症率,身体機能などに影響を及ぼすと考えられる。しかし,認知症患者の栄養状態改善に向けた研究報告は少なく,統一した看護介入方法が明らかになっていない。そこでNutrition Screening Initiative (以下NSI)評価表を用いて患者および家族への聞き取り調査を行い,多職種連携することで栄養状態を維持改善できるのではないかと考えた。【目的】NSI評価表を用いた聞き取りを実施し栄養評価・食事調整を行うことで患者の栄養状態が維持改善できるか調査する。【実践内容・方法】A病院B病棟に研究期間中に入院した大腿骨近位端骨折患者で,認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上と判定された患者のうち,低栄養状態を示し,本研究に同意を示した患者を対象者とした。患者及び患者家族へ本研究の主旨を伝え,研究ならび発表の同意を得た。情報は個人が特定されない様に配慮し,A病院の研究倫理審査委員会の承認を得た。(承認番号 23-3)【結果】A氏:80代女性 アルツハイマー型認知症NSI評価:6点。食事形態は入院時ペースト食から開始し,義歯安定後は嚥下食3とした。食事摂取量は8割程度と低下がみられたが,TPの値は術後4.8g/dlから退院時5.2g/dlへ軽度上昇が見られた。B氏:80代女性 レビー小体型認知症NSI評価:6点。食事形態は、一時ペーストとしていたが,退院前に嚥下食3へ変更した。食事摂取量は1口から8割と変動があったものの,血液データではTP6.4g/dlから7.0g/dlへ上昇が見られた。【考察】NSI評価表を用いたことにより,入院前の摂食状況と現状の比較が可能となり,嚥下障害への気付きが促進できたと考える。A氏では嚥下機能に応じた食事形態及び食事環境の改善ができ,B氏では高齢者に起こりやすい症状に適切に対応することで,栄養状態低下を予防することができた。多職種と情報の共有を行うことで,それぞれの専門性を生かし,食べる力を促進できることが分かった。患者の状態の変化に素早く気づき多職種へ情報を提供し,共有することが看護師に求められると考える。【実践への示唆】1 栄養状態を維持,改善するためには患者の個別性を理解した上で多職種連携を行い,多方面からケア介入を行う必要性が明らかとなった。2 入院時にNSI評価表を用いて聞き取りを行い,入院中の状況と比較することで認知症の人の食事摂取を阻害する因子を明らかにすることができた。