[ポスター3-1] 心臓手術後の食事摂取に関する実態調査
摂取充足度と手術関連因子の摂取量への影響
【緒言】先行研究では、重症患者は栄養障害リスク症例であり、エネルギー負債は死亡率増加や在院期間延長と関連することが知られており、早期に適切な栄養療法を行うことが重視されている。また、侵襲下ではoverfeedingを避ける管理が望ましいとされる。A病院では心臓手術後1日目の昼から食事再開となるが、多くの患者は数口の摂取に留まる事が多く術後回復過程において摂取量が不足しているのではないかと考えた。摂取状況の実態を把握し、摂取量に影響する要因として年齢、手術時間、人工心肺(以下CPB)の有無が関連するのかを明らかにしたい。【目的】心臓手術を受けた患者の食事摂取量の充足度及び年齢や手術関連因子が術後摂取量に及ぼす影響について明らかにする。【方法】対象:A病院にて202X年7月から2年間に心臓手術を受けた患者72名。データ収集方法:診療録から術式、年齢、性別、身長、体重、食種、摂取量、手術時間、CPB時間、輸液量を収集し、摂取カロリーは術後3食の摂取量と投与された輸液量から算出した。分析方法:術後必要な栄養エネルギー量は簡易式を採用し、摂取カロリー別に過剰群、適量群、不足群に分類した。年齢、手術時間、CPB時間と術後摂取量の比較は統計解析を行った。倫理的配慮:A 病院の研究倫理審査委員会の承認を得た(承認番号 A‐838-01)。【結果】平均摂取量は①術前3食が9.4割、②術後1~3食が4.6割、③術後4~6食が5.3割であり、Wilcoxonの符号付順位和検定で①と②、①と③はp=0.00〔**〕と術後摂取量は有意に少なかった。術後必要な栄養エネルギー量と術後1~3食の摂取カロリーの比較では、過剰群6名(平均BMI 18.7)、適量群11名(平均BMI 23.0)、不足群55名(平均BMI23.4)であった。年齢、手術時間、CPB時間と摂取量の関連の検討はMan-WhitneyのU検定を行い、65才以上は49名で摂取量5.0割、65才未満は23名で摂取量4.4割、p=0.5であった。手術時間は中央値で分け、長時間群は36名で摂取量4.8割、短時間群は36名で摂取量4.8割、p=0.8であった。CPB時間は人工心肺装置を使用しない心拍動下冠動脈バイパス術(以下OPCAB)群とCPB使用群に分類し、OPCAB群は19名で摂取量4.8割、CPB使用群は53名で摂取量4.8割、p=0.9であった。【考察】術後必要な栄養エネルギー量と術後1~3食の摂取カロリーの比較において、過剰群は平均BMI18.7と痩せ気味であり、低体重者は外因性エネルギーが多くなると容易にoverfeedingに陥る可能性があることが示唆された。年齢、手術時間、CPB時間は、摂取量との有意差がなく、心臓手術そのものが生体侵襲となっていると考えられた。【結論】術後摂取量は有意に低下しており、年齢や手術時間、CPB時間と摂取量には関連がないことが明らかとなった。本研究で得られたデータは一施設の結果であり、一般化には限界がある。次研究では、患者の想いや生体侵襲以外の要因を追及し、食事ケアの質の向上に繋げていく。