第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

講演情報

ポスター

ポスター32群 業務改善に向けた取り組み②

2024年9月28日(土) 10:30 〜 11:30 ポスター会場 (展示ホール)

座長:岩澤 由子

[ポスター32-5] 消灯時間変更がもたらした患者・看護師への効果

上原 香織, 福島 俊江 (埼玉石心会病院)

【背景】昨今、健康づくりのための睡眠ガイド(厚生労働省.2023)やライフエッセンシャル8(AHA.2022)など睡眠の重要性が着目されている。その中で年齢に応じた生理的睡眠時間を考慮した生活習慣、良い睡眠は心血管系の健康に不可欠であると言及されている。A病院では患者の生理的な睡眠環境を整える検討を重ね、消灯時間を21時から22時へ変更した。【目的】消灯時間変更による、患者の睡眠・看護業務への効果を明らかにする。【実践内容・方法】202X年7月より消灯時間を21時から22時へ変更。変更は看護部責任者会議で提案し賛同を得、電子カルテ院内報で周知した。患者の変化はB病棟の深夜のナースコール数を消灯時間変更前後でt検定(spss.Ver26)を実施、夜間の転倒転落件数割合・不眠時対処指示の睡眠薬使用数を調査した。又、変更から5か月後に入院病棟勤務の看護師を対象としたアンケートの実施。対象看護師413名中293名から回答あり(回答率71%)。報告については当院倫理審査を受審した(2024-03)。【結果】B病棟のナースコール数(離床センサー・トイレコール含む)について、消灯時間変更前の5・6月と変更後の7月~10月を比較し2時~4時台で有意差を認めた。夜間の転倒転落件数割合・睡眠薬使用数に大きな変化はなかった。看護師へのアンケート結果では、消灯時間の変更は89%が認知。知識・意識面では、「年齢に応じた適切な睡眠時間の知識を得た」17.4%「年齢に合わせた睡眠時間の確保を検討する」15%「高齢者の睡眠時間の意識が変化した」11.3%であった。実務面では、「特に変化なし」46.1%「イブニングケアや術後の観察への余裕」24.6%「患者の普段の生活リズムを保ちやすい」13%「ナースコール頻度が減った」2.7%「入眠導入剤の使用頻度が減った」2.0%「転倒転落が減った」1.4%であった。【考察】B病棟のナースコール数を比較し消灯時間変更後、2時~4時台のナースコール数が減少していた。これは患者がこの時間帯に入眠出来ていることが推察され、中途覚醒している患者の減少が考えられた。睡眠、特に深いノンレム睡眠は人体、とりわけ心血管系にとって重要な休息時間であり(葛西.2022)人間の生理的欲求の充足にも不可欠である。又、看護業務面においても夜間のナースコール数の減少は労働環境改善に繋がる。消灯時間変更が患者・看護師ともに良い効果をもたらしていると考えられる。消灯時間の変更は院内全体へ周知できているが、年齢に応じた生理的睡眠などの知識・意識面については継続した周知の必要がある。【実践への示唆】今回の取り組みは患者の睡眠、看護師の夜間の労務環境改善に向け、今後更なる検討を進めるための示唆を得られた。消灯時間変更の取り組みにより、患者の睡眠環境を整えること、高齢化社会の看護を担っていく私たちのケア実践を高める教育を看護管理者として推進し、患者の睡眠の質・看護師の労務環境改善に繋げていく。