[ポスター4-5] 社会人経験新人看護師が職場適応に抱く思い
急性期病棟で働く社会人経験看護師の思い
【緒言】看護職の社会的評価の向上、経済成長の鈍化による資格志向等により、看護職以外の異業種での就業経験をもつ、いわゆる社会人経験者が看護職へと転向する事例が増加傾向にある。一方で、職場に適応できず離職していくことも報告されている。そのような中、急性期病棟で働く社会人経験のある新人看護師が職場適応に抱く思いに焦点を当てた研究はみられなかった。そこで、社会人経験のある新人看護師の職場適応に抱く思いを明らかにすることで、新人看護師の指導方法やメンタルケアを考える際の基礎資料となると考えた。 【目的】急性期病棟で勤務する社会人経験のある新人看護師が職場適応に抱く思いを明らかにする。【方法】202X年4月入職の社会人経験のある急性期病棟で働く看護師5名を対象に、職場適応に抱く思いについて半構成的面接法を用いたインタビュー調査を行い、Krippendorff の質的研究の手法を用いて分析した。本研究は所属施設の倫理審査委員会の許可を得て行った(承認番号 01-000185)。 【結果】研究参加者は5名(男性2名、女性3名)で、年齢は20歳代~40歳代(平均年齢31歳)であった。専門教育歴は、専門学校卒業が3名、看護系大学卒業が2名で、担当したプリセプターは、社会人経験ありが2名で、社会人経験なしが3名であった。インタビューから抽出された急性期病棟で勤務する社会人経験のある新人看護師が職場適応に抱く思いに関する文脈は58文脈であった。分析の結果、社会人経験のある急性期病棟で働く新人看護師が現場適応に抱く思いとして、〈新人の自分を受け入れる〉、〈社会人経験が活きる〉、〈社会人経験が邪魔をする〉の3つのカテゴリが抽出された。 【考察】社会人経験のある新人看護師は、〈新人の自分を受け入れ(る)〉、転職を契機に目標をもって発奮興起し、職場に適応していこうとしていた。一方で、前職で獲得したスキルがスタッフとの人間関係構築や患者との関わりに活かされていたことから〈社会人経験が活きる〉場合と、社会人経験者は自尊心が高く、他者からの否定的評価を恐れるという報告があるように、本研究においても社会人経験者としてのプライドが邪魔をしてサポートを依頼しづらく感じることや先輩に気を遣われて壁を感じるといった、〈社会人経験が邪魔をする〉場合があることがわかった。 【結論】社会人経験のある新人看護師は、新人看護師としての自分を受け入れ、職場に適応していこうとしていた。一方で、社会人経験が強みとして活かせる場合と、やりづらさにつながる場合があることが示唆された。転職を契機に発奮興起し看護師を目指した思いを尊重し、心情が理解しやすい社会人経験のある指導者が担当すること、また、既存の教育プログラムに個々の学習ニーズを追加することで、看護師という職業に適応できるようサポートしていく必要がある。