第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

講演情報

ポスター

ポスター5群 緊急・重篤な状態から回復することへの支援

2024年9月27日(金) 11:15 〜 12:15 ポスター会場 (展示ホール)

座長:門馬 康介

[ポスター5-3] 人工呼吸器患者の苦痛軽減への取り組み

HCU中堅看護師の暗黙知の明確化

松本 幸城, 源川 円, 角 順子 (くまもと県北病院)

【背景】 人工呼吸器装着患者は様々な苦痛を体験している。中堅看護師は多角的な視点を持ち、いろいろな場面で暗黙知を活用し看護を実践している。 中堅看護師とは、パトリシアベナーの提唱する看護理論において臨床経験が5年以上20年未満であり、同じ領域での臨床経験が3年から5年の看護師を指す。中堅看護師の人工呼吸器装着患者に対する暗黙知に関する研究は少ない。そこで、人工呼吸器装着患者に対し中堅看護師が苦痛軽減のために考えている暗黙知と看護実践を明らかにすることで看護の質向上に繋げたい。【目的】 A病院HCUに所属する中堅看護師が、人工呼吸器装着患者に対して苦痛軽減のために実践している看護を明確にし、看護の質向上を目指す。【実践内容・方法】 A病院HCUで人工呼吸器治療を受けた患者を受け持ったことがある中堅看護師9名に対し、202X年1月から202X年3月に半構造化インタビューを行い、逐語録を作成した。その中から、人工呼吸器装着患者の苦痛に関する内容を抜粋しコード化した後、類似するコードを集めサブカテゴリーを抽出し内容を示すネーミングを行った。倫理的配慮は、対象者へ説明書を用いて研究目的と方法、不参加による不利益がないことを説明し同意を得た。また、得られたデータは匿名性を確保した上で厳重に管理し、研究終了後は速やかに破棄を行った。本研究はA病院倫理委員会の承認を得た。(承認番号A‐202315)【結果】 HCU中堅看護師は6つのカテゴリーに対して看護を考え実践していた。【挿管に対する苦痛】【呼吸器設定に関する苦痛】【処置に対する苦痛】では、挿管チューブ位置の固定方法の検討、医師や薬剤師、臨床工学技士など多職種での話し合い、鎮痛薬や呼吸器設定での評価を行っていた。【身体拘束に対する苦痛】では、定期的に安全帯を解除し他動運動を実施していた。また、【自分の意思が相手に伝わりにくい苦痛】【思うように動けないことに対する苦痛】では、文字盤や筆談などを活用し訴えに耳を傾け、治療への協力を得ていた。【考察】 HCU中堅看護師は、常に患者の苦痛が何かを考えながら看護を実践しており、苦痛を捉えた時点で何らかの介入を行っていることが明らかになった。中でも、【身体拘束に対する苦痛】に対しては、看護師自身の関りにより最小限の苦痛にできると考え行動していることが考えられる。また、自分の暗黙知だけではなく、多職種への相談を行うことで、幅広い視野から捉えた看護実践を提供していた。中堅看護師の看護実践では、他職種との協働が期待されており、この経験の関与は中堅看護師の看護実践能力の特徴であることを示唆している文献もある。これは、HCU中堅看護師の経験を深めることに繋がり、暗黙知を増やす行動ではないかと考える。【実践への示唆】 HCU中堅看護師が持つ暗黙知を形式知に転換し共有することで、組織全体の看護の質向上に繋がるのではないかと考える。