[ポスター5-5] 一般病棟における人工呼吸器離脱への取り組み
消化管穿孔の術後高齢患者への多職種介入
【背景】A病院では、全病棟で人工呼吸器装着患者(以下呼吸器装着患者とする)を受け入れている。B病棟では呼吸器装着患者の看護経験が少なく、苦手意識を持つ看護師が多いという現状がある中、直腸癌穿孔にて緊急ハルトマン術を施行し、複合的な呼吸筋疲労のため呼吸器離脱困難となった80歳代の女性、A氏を受け入れた。敗血症性ショックにより術後集中治療室へ入室し、気管切開術後に呼吸器を装着したままの転院方針であった。しかし、B病棟へ転入後意識レベルの改善に伴い、A氏が発した「家に帰りたい」という思いを尊重し、診療看護師(以下NP)を含む多職種と協働し呼吸器離脱に向けた介入を実施した。【目的】A氏へ行った看護実践を振り返り、一般病棟における呼吸器装着患者への看護の課題を抽出する。【実践内容・方法】看護師の基礎的な知識を再確認することを目的に、A氏の受け入れ前にNPにて呼吸器に関する勉強会を実施し、相談体制を整え34病日目に集中治療室から受け入れた。A氏の自宅に帰りたいという思いやリハビリテーション(以下リハビリ)に積極的な様子を見た看護師よりNP、医師へ相談し離脱に向けた多職種カンファレンスを開催した。短期目標と長期目標を共有し、リハビリでは週2~3回の車椅子移乗を目標とし、移乗時は看護師が必ず付き添うことができるように時間を調整した。栄養面では経管栄養のメニューや投与時間を見直し、A氏の状態に合わせた介入を実施した。そして、閉鎖的な空間ではなく窓のある大部屋へ移動し気分転換を図り、日々リハビリを頑張るA氏を労い、できていることを伝え精神的サポートも実施した。倫理的配慮としてA病院の看護研究倫理委員会の承認を得た。(承認番号2023013)【結果】78病日目に日中7時間呼吸器離脱ができた。外の景色やテレビを見ることで、A氏の笑顔が増え、よりリハビリにも積極的になっていた。 83病日目に完全に呼吸器から離脱できた。独居のため現状のADLでは自宅退院が難しく97病日目にリハビリ転院となった。【考察】多職種カンファレンスを開催し、日々関わる受け持ち看護師も一日のスケジュールを意識して行動でき、統一した看護介入ができたと考える。またA氏が継続してリハビリを実施できたことも離脱が成功した要因である。その背景として、看護師が行った精神面への支援もA氏の自己効力感を高めリハビリを意欲的に行うことに繋がったと考える。【実践への示唆】患者の一番近くで関わる看護師やNPが中心となり、患者の状態に合わせて多職種と連携し栄養士やリハビリテーション科などの専門性を活かした介入を実践することが、患者の思いを実現する一助になると示唆された。また今回の症例では、離脱を順調に進めることができたが、今後はトラブル発生時の対応も病棟看護師が実施できるようにしておくことが課題であると考える。