[ポスター59-1] 消化器内視鏡検査の安全な管理体制の構築
リスク因子の現状調査から入退室安全スコア導入に向けて
【緒言】近年、治療に伴う内視鏡手技は複雑化し、侵襲度も高くなっている。内視鏡治療を安全かつ苦痛なく完遂するには鎮静が必要となるが、長時間の内視鏡治療や高齢者においては過鎮静となる。先行研究ではリスク要因に関する研究は認めたが、内視鏡治療の入退室安全スコアに関する研究は認めなかった。【目的】本研究においては、内視鏡検査治療前後のリスク因子の評価を行い、鎮静に関連した独自の入退室安全スコア導入に向けた検証を目的とした。【方法】202x年度に上部内視鏡的粘膜剥離術(以下ESDn=77)、内視鏡的逆行性胆道膵管造影・内視鏡的逆行性胆道ドレナージ(以下ERCP/ERBDn=200)を後方的に調査。内視鏡鎮静ガイドラインや先行研究のリスク要因を基に設定。身体的リスクスコアは、年齢、BMI、既往歴、抗凝固剤服用の有無、アレルギー、認知症を設定。治療的リスクスコアは、治療時間、鎮静剤量、バイタルサイン(治療終了時、病棟帰室時)を設定しスコア化した。専門家へデータの妥当性や基準の分析を依頼、両スコアを入退室安全スコアとして開発。スコア尺度分析としてピアソンの相関係数を用い分析。本研究はデータ入力の際はコード化し、得られたデータの電子媒体は鍵付きロッカーで保管、紙媒体はシュレッダーで処理した。A病院の研究倫理審査委員会の承認を得た。(承認番号 2022-36)【結果】年齢と身体的リスクスコアはESD群r=0.567,ERCP/ERBD群r=0.339、両群p<0.001。年齢と鎮静剤総量はESD群r=-0.431、ERCP/ERBD群r=-0.551、両群p<0.001。治療時間と治療的リスクスコアはESD群r=0.687、ERCP/ERBD群r=0.376、両群p<0.001。鎮静剤総量と治療的リスクスコアはESD群r=0.632、ERCP/ERBD群r=0.377、両群p<0.001。治療的リスクスコアの内視鏡終了、病棟帰室時評価ではESD群r=0.769、ERCP/ERBD群r=0.548で両群p<0.001。治療時間と鎮静剤総量はESD群r=0.640、ERCP/ERBD群r=0.443で両群p<0.001であった。【考察】年齢と身体的リスクスコアは両群に正の相関があり、年齢と鎮静剤総量は負の相関を両群に認めた。これは、年齢が高くなると鎮静剤総量が少なり、身体的リスクが高い患者は鎮静剤を配慮していることが推察される。鎮静剤総量、治療時間は治療的リスクスコアと正の相関を両群認めており、治療的リスクスコアを上昇させる要因であると考える。また、治療的リスクスコアの内視鏡終了、病棟帰室時評価も正の相関を両群認めており、継続的な評価としてスコアが有効であると考える。年齢や肥満、既往歴の身体的リスク要因は、治療的リスクスコアと間接的に影響を受けており、入退室安全スコアとして有効であることが示唆された。【結論】本研究の期間では、身体的リスクスコアと治療的リスクスコアの相関や関連性の有効性について示唆された。しかし、今後も継続的なスコアデータを集積し、入退室安全スコアの有効性について検証が必要と考えた。