第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

講演情報

ポスター

ポスター8群 排泄ケア

2024年9月27日(金) 14:15 〜 15:15 ポスター会場 (展示ホール)

座長:中村 京子

[ポスター8-1] 水溶性食物繊維摂取による排便への影響

開始後2年を経過して

杉本 愛, 中田 智子, 才田 悦子 (千木病院介護医療院)

【緒言】A介護医療院(以下A)では経口摂取者の多くが慢性便秘である。多くの文献には「水溶性食物繊維(グアーガム分解物、以下PHGG)摂取量の正常化で便秘が改善」とあるが、介護医療院でのデータがほとんど無いため、Aでは202X年より経口摂取者にPHGGを投与し便秘の改善を試みている。開始後2年が経過したAのデータを検討することで、介護医療院での排泄ケア改善への一助となると考える。【目的】202X年の開始時はブリストルスケール(以下BSS)③~⑤の便性状に近づけることができ、一部下剤の減量になった。今回開始後2年が経過し、PHGGを取り入れたことで入所者の排便状況や便汚染による衣類等の交換にどのような影響が見られたかを明らかにした。【方法】1.調査期間:202Y年6月~10月の内3か月 2.調査対象者:2021年よりPHGG投与中の入所者9名 3.調査方法:看護記録より以下の項目を抽出 1)排便状況(BSS、排便量) 2)排便処置(ビサコジル座薬(以下座薬)、ピコスルファートナトリウム水和物(以下ピコ)の使用回数、摘便回数) 3)便汚染による衣類交換の回数 4.分析方法:全体の傾向は平均値で比較し個別には実数で比較した。 5.倫理的配慮:B病院倫理審査委員会の承認を得、匿名化及びデータ管理で個人情報を保護した。 【結果】1)多くの対象者はBSS④、⑤の便性状であった。下剤を使用していない人はBSS④、⑤の便が多く、下剤服用者はBSS⑤の便が多かった。2)排便処置ではピコの使用が減り座薬の単独使用が増えた。C氏はオムツ内排泄であったが座薬を使用してトイレ誘導を繰り返すことでトイレ排泄が出来るようになり、便意を知らせるようになった。3)便汚染による衣類交換回数は2件増えた。【考察】1)排便状況では、多くが2年前同様BSS④、⑤の便性状であった。今回下剤を服用していない人のBSS⑤の便が増えた理由としては、内服薬の影響やトイレ排泄がオムツ内排泄となったこと等が考えられる。2)排便処置では、便の性状がよくなり座薬のみで反応便がみられるようになった人や、摘便のみで排便する人が増えたことが関連していると考える。C氏の事例では、座薬を使用してトイレ誘導を繰り返すことで、高野らが「前傾姿勢で排便が容易になる」と言うように、便意を感じやすくなりトイレ排泄の成功体験から本人のやる気に繋がったと考える。3)便汚染の多かった2名は寝たきりで下肢の拘縮が進んでおり、BSS⑤の硬さでも下肢とおむつの隙間から便が漏れやすい状態であった。石原らは「入居者のQOLが向上し介護負担も軽減」と述べているが、Aでは汚染衣類交換の負担は軽減しなかった。【結論】PHGG開始後2年が経過して、BSS④、⑤の便を維持できており排便処置は改善されたが、廃用が進んだ影響等個別の事由により衣類の便汚染回数は軽減しなかった。