[SL3-1] コロナ禍における看護職の苦難とトラウマ後の成長
COVID-19の法律上の分類が変更されて1年4か月が経過する。看護職を巡る状況はどのように変わっただろうか。あるいは、変わっていないだろうか。 社会全体が大きな脅威と感染症の不安に直面した時期、医療関係者への注目と感謝もあったが、疲弊とともに、家族を含めた差別もあった。看護職は患者・家族と医療現場を守るための努力と共に、家族についての心配をも抱えた。社会がコロナ前への回復を目指して進み始めると、感染のリスクが高い医療現場はすぐに対応を変えることが困難で、社会との間のギャップ、時差を感じることになった。面会や入院患者への処遇をめぐっては議論がある。社会生活を送る存在としての看護職と、医療現場の状況との二つの価値観に苦しむこともある。私たちは、常に状況の光と影の双方から影響を受けている。 講演では、それぞれの時期の経験を振り返ってみたい。日本国内だけでなく、世界から様々な経験が発信されており、制度や文化を超えて苦悩は驚くほど共通している。スタッフの立場、管理職の立場では局面が異なっており、これらについても共有する。苦難を乗り越えた経験を共有する上で、トラウマ後の心理的成長(PTG)や、苦難に対応する力であるレジリエンスへの注目も集まっている。これらの概念は看護職の支えとなる。一方で、間違った解釈は新たな差別や偏見のもとになり、看護職を苦しめる場合がある。これらについても解説したい。苦難の経験やそこからの回復の力に優劣はなく、誰もが自身に与えられた最大の力で立ち向かっている。管理職も、スタッフも、置かれた状況や立場で最善を尽くしてきた。互いのあり方、多様な状況を批判しあうのでなく、それぞれがありのままに受け止めるために、この講演が役立つことを願っている。