第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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シンポジウム

シンポジウム3 健康危機に強い地域づくりを考える

Sat. Sep 28, 2024 3:00 PM - 4:30 PM 第1会場 (メインホール)

座長:高鳥毛 敏雄

講師:高鳥毛 敏雄・服部 希世子・北野 晶・島村 通子・三橋 祐子

[SY3-1] 感染症の健康危機に強い地域づくり

高鳥毛 敏雄 (関西大学社会安全学部・社会安全研究科特別契約教授)

日本の感染症対策は、明治時代から伝染病予防法や結核予防法などの個別法で対応がなされてきた。しかし、1980年以降に新興感染症など次々に新しい感染症が現れて、個別法では対応できなくなり、また感染症の患者の人権を配慮した対応と患者に対する適切な医療の提供体制を整備することが求められていることを踏まえ感染症は結核も含めて「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(通称感染症法)」で対処する法体制になっている。その後の2009年に新型インフルエンザ感染症(以下特措法)がパンデミックとして発生したことから、パンデミックの発生には、流行発生地で地域をあげて早期に流行を封じ込める対策を講じることが必要であり、社会全体で対応する必要があると認識され、特措法が制定された。 2020年1月に新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)の流行は、感染症と特措法が整えられている中で発生したものであった。COVID-19は流行波が繰り返し起こり、新たな流行波では感染者数が倍増して、初期時から保健所、感染症指定医療機関だけの感染症専門機関だけでは対応ができない状態となった。最終的には地域のほとんどの医療機関も参加、協力して対応することが求められた。 この事態を受けて、COVID-19の流行が落ち着いた2023年に、国は感染症法及び地域保健法を改正し、都道府県に「都道府県連携協議会」を設けて、圏域の保健所設置市及び消防機関などと一体となってパンデミックに対応できるようにするために「感染症予防計画」の策定を求めている。パンデミックが発生した時には、保健所や感染症指定医療機関だけでは対応できるものではないことから、特に保健所設置自治体には全庁的に対応できるように予防計画等との整合性を確保しながら平時のうちから健康危機に備えた準備を計画的に進めるために保健所健康危機対処計画を策定しておくことが求められている。 つまり、感染症の危機に対するために、保健所、医療機関、薬局、介護・福祉の事業者、さらに消防署(救急隊)などの地域の関係機関が連携して対処できる体制づくりを行うことが求められている。ここでは感染症に焦点を当てて、健康危機に強い地域づくりの現状と課題について、話をする。