第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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ポスター

ポスター10群 チーム医療

Tue. Nov 8, 2022 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場 (国際展示場)

座長:阿久津 美代

[ポスターM-10-5] 医療通訳をめぐるA 県医療者の外国人医療への認識

井川 由貴, 長坂 香織 (山梨県立大学)

Keywords:外国人医療、医療通訳、医療者の認識

【抄録】
【目的】医療通訳をめぐるA 県医療者の外国人医療への認識を明らかにする.【方法】24 施設の医療者201 名に郵送調査を行った.職種,勤務年数,外国語での対応が必要な場面,外国人対応で困難を感じること,言葉が通じず困った経験,言葉以外で困った経験,外国人患者とのコミュニケーション手段,通訳活用経験,自身・通訳者の対応への満足度,通訳者の立場,通訳の依頼ルートを調査項目とした.数値データは記述統計を示し質的データは内容の類似性に沿って整理した.所属機関の研究倫理委員会の承認を得て実施した.【結果】 看護師が118 名(58.7%),医師が31 名(15.4%),薬剤師が29 名(14.4%),次いで助産師,医療社会福祉士であった.臨床経験10 年以上が94 名(46.8%)で,所属は外科系47 名(23.4%),内科系42 名(20.9%),他であった.外国語での対応が必要な場面(複数回答)は「入院患者・家族への対応」が131 名と最多で,次いで「外来患者への対応」,「薬の服用指導」であった.150 名(74.6%)に言葉が通じず困った経験があり,特に「主訴の聞き取り」,「処置・検査」,「検査結果・治療方針の説明」等を困難としていた.自由記述では「言葉と意思疎通」の困難が多く,「文化の違い」「制度への心配」の他,言葉や文化の受け入れができない点を医療者側の課題とする回答もあった.また「電子辞書(192 名)」「多言語問診票(192 名)」「多言語パンフレット(185 名)」をコミュニケーション手段とする者(複数回答)が多かったが,自身の対応に153 名(76.1%)が満足しておらず,通訳を介した場合(149 名)は72 名(48.3%)が満足していた.その理由を「患者・医療者の円滑な仲介」「標準的な通訳業務の質の担保」「通訳の正確性」とする一方,「正確な医療用語の通訳への疑念」「通訳者としての基準的能力の欠如/限界」「通訳体制の限界」に不満を感じていた.このうち66 名(44.3%)は自施設の通訳依頼ルートを知らず,通訳者は家族,友人・知人が8 割を占めていた.【考察】医療者が外国人対応で困るのは日常的な医療場面であった.医療通訳の専門性の認知や依頼ルート等の周知,危険な家族通訳の許容が課題として明らかになった.日本人患者と同質な医療提供によるユニバーサルヘルスカバレッジを担保するためにも早急な外国人患者対応の整備が求められる.