第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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ポスター

ポスター14群 意思決定支援

Tue. Nov 8, 2022 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場)

座長:山田 仁映

[ポスターM-14-2] 悪性リンパ腫患者の抗がん剤治療選択における新人看護師の意思決定支援

岡部 幸, 上田 紋子, 岡 佳子, 姫野 美佐子 (飯塚病院)

Keywords:悪性リンパ腫、新人看護師、意思決定支援

【抄録】
【目的】悪性リンパ腫患者の抗がん剤治療選択における新人看護師が行った意思決定支援を考察し報告する。【方法】悪性リンパ腫患者の治療選択における新人看護師が行った意思決定支援について、診療録やプロセスレコードより抽出し考察する。患者の個人情報保護の遵守に留意した。【結果】A 氏、80 代男性。病状説明時に悪性リンパ腫に対して抗がん剤治療が決定された。病状説明時の記録に、A 氏が語った言葉として「最後の挑戦」と綴られていたが、治療前日にA 氏より「抗がん剤をしたくない」という気持ちが新人看護師に語られた。何故そう思うのか理由を尋ねると、以前より抗がん剤をしないと決めていたが、病状説明時にその場の流れで治療をすると決断してしまい、一晩冷静に考え直したことで「抗がん剤をしない」という結論に至ったことが表出された。新人看護師は、患者の「抗がん剤をしたくない」という気持ちが「抗がん剤をしない」という強い決心に変化したことを捉え、知人が同じ病気で亡くなったという知らせを受け、その気持ちがより強くなったことが背景にあることを知った。さらに、この選択は、A 氏が最も大切にしている価値であり、A 氏の生きかたであると気づき、このままではA 氏が「抗がん剤をしない」と決断したことに反して治療が開始されてしまうことに強い焦りを感じた。そして、A 氏の大切にする価値や生きかたを尊重したいと考え、勇気をだして医師に相談した結果、翌日予定されていた抗がん剤治療が急遽中止されることになり、A 氏の意思を尊重することができた。A 氏は、改めて80 代である自身の体力を心配し、治療しても改善しないことがあることを理解した上での決断であったことを語り、その意思を医療者が尊重したことに感謝された。【考察】患者の治療選択の意思決定支援において、看護師は患者の自己決定権の尊重とその権利を擁護する役割を担っており、この事例において新人看護師がA 氏の治療に対する気持ちや大切にする価値を理解し、それを医師に代弁することでA 氏の自己決定権を擁護することができたと考える。人生の最終章を生きるA 氏にとって、自身の治療選択が今後の生きかたの選択とも言える。治療前日であり、方針が決定された中で新人看護師が医師にA 氏の意思を代弁することは勇気が伴うが、A 氏にとっての最善を考え、権利を擁護するためにとても大切な支援であったと考える。