第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

ポスター

ポスター15群 せん妄の看護

2022年11月8日(火) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場)

座長:原田 路可

[ポスターM-15-1] 心臓外科術後せん妄の発生状況とリスク因子の検討

長田 知恵, 上野 高義 (大阪大学大学院医学系研究科)

キーワード:心臓外科、周術期看護、せん妄

【抄録】
【目的】せん妄は約60% 程度が見逃されているといわれるが、本邦において確立した診断基準に基づき心臓外科術後せん妄の実態を調査した報告は少ない。本研究では、心臓外科術後せん妄の発生状況を明らかにし、せん妄発生に影響する周術期因子検討のための基礎資料とする。【方法】単施設前向き観察研究とした。2021 年11 月~ 2022 年2 月にA 病院で心臓・胸部血管手術(カテーテル手術を除く)を受ける成人患者を対象に、術前の身体認知機能を評価し、採血結果等の周術期データを収集した。術後はICU 退室日と、精神状態の変化が疑われた時点で患者を訪問し、精神科専門医を含む調査員がDSM-5 の診断基準に則りせん妄の有無を評価し、MDASを用いてせん妄の重症度を評価した。収集した変数についてせん妄発症の有無で比較し、更にせん妄の重症度ごとに集計した。本研究は当該病院の倫理審査委員会で承認を得た。【結果】対象となった患者33 名のうち、15 名(45.5%)に術後せん妄が生じた。うち低活動型9 名(60.0%)、混合型5 名(33.3%)、過活動型1 名(6.7%)であり、MDAS[ 中央値, 範囲] は全体[7, 2-17]、低活動型[5, 2-9]、混合型[10.5, 5-17]、過活動型[14]であった。症状では「睡眠- 覚醒リズムの障害」(85.7%)が最も多く、ついで「順唱、逆唱の障害」(71.4%)がみられた。「見当識障害」があった者の割合は28.6% であった。せん妄群は非せん妄群に比べ高齢で(p=0.011)、術前認知機能障害を有す割合が多かった(p=0.013)ほか、手術アプローチ法や術中麻酔法についても各群で異なった傾向がみられた。また患者の術前状態をせん妄の重症度ごとに集計したところ、重症群と軽症群の間で、術前ADL や精神機能、栄養状態に差異がみられた。【考察】心臓外科術後のせん妄は低活動型が多く、精神的過活動を呈すものほどせん妄の重症度が高い傾向が明らかになった。本研究で多く見られた低活動型せん妄では、看護師が日常的に評価する見当識障害等の項目では正常となる患者も多く、このような患者のせん妄は見逃されやすい可能性がある。またせん妄の重症度は患者の術前ベースライン状態の影響を受けやすい可能性があるが、これは周術期のせん妄対策へ示唆を与えるものであり、より多くの症例数で更に検証する必要がある。