第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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ポスター

ポスター15群 せん妄の看護

Tue. Nov 8, 2022 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場)

座長:原田 路可

[ポスターM-15-2] HCU 入室患者の低活動型せん妄発症の現状

高橋 真美1, 木村 萌香1, 松本 実代1, 平岡 玲子2 (1.大和高田市立病院, 2.順天堂大学保健看護学部)

Keywords:低活動型せん妄、早期発見、重症患者、ICDSC

【抄録】
【目的】低活動型せん妄の症状は無気力・無関心など活気のない状態で, 一見安定しているようにみえることから見逃されやすい。持続時間が長く認知症患者に合併した場合, 死亡率が高くなると指摘されており, 早期発見することは退院後も含めた長期的な予後の改善が期待できる。本研究の目的は,A 病院HCU での低活動型せん妄患者を把握し, 発症しやすい患者の傾向や特徴を明らかにすることである。【方法】入室患者を対象に3 ヶ月間ICDSC を用いて評価し, それをもとにDelirium Motor Subtyping Scale(DMSS)を用いて分類した。年齢・VS・血液検査・デバイスに対し, ウェルチのt 検定で分析し, 性別・身体抑制・ストレス・せん妄のリスク因子はカイ二乗検定で低活動型群とせん妄未発症群で比較した。統計的有意水準はp < 0.05 とした。本研究は非侵襲的で,A病院倫理委員会に承認を得ている。【結果】全53 症例のうちICDSC で約60% せん妄と判定された。DMSS によると低活動型15 名, 過活動型10 名, 混合型1名となり, 病名は様々で全身管理が必要な重症者であった。体温(p=0.03)70 歳以上(p=0.03)身体拘束(p=0.004)ストレス(p=0.04)と有意差が認められた。【考察】低活動型が過活動型より50% 多いことが分かった。傾向や特徴として, 体温と年齢・身体拘束とストレスが関連していることが分かった。低活動型は脳の中枢や視床・皮質系の活動低下で症状が出現し, 過活動型は大脳辺縁系の過剰な興奮によるものといわれている。発熱は脳神経からノルアドレナリンなどの物質が放出されることにより神経症状を引き起こす。発熱の程度を比較すると, せん妄未発症群が一番低く, 次に低活動型群であり, 過活動型群で高値を認めた。これは, 発熱が中脳に留まることにより低活動型が発症しやすくなる可能性があると考えられる。また, 年齢や身体拘束, ストレスが身体活動を低下させることにより低活動型発症を促進させる要因になる可能性が高いことが分かった。しかし, 先行文献は少なく低活動型と過活動型との分岐点になる要因は解明できなかった。今回の結果から有意差が認められた項目に注目することで, 低活動型を見落とさないことが可能となる。今後低活動型せん妄の特徴や傾向が解明されていくことで, 発症の予防や早期発見につなげることが出来ると考える。