第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

Presentation information

ポスター

ポスター19群 疾病・障がいとともに暮らすことへの支援

Wed. Nov 9, 2022 9:30 AM - 10:30 AM ポスター会場 (国際展示場)

座長:高木 真希

[ポスターM-19-3] 精神保健福祉サービスを利用していない統合失調症の子と同居する親の自立の葛藤

長澤 寮1, 中村 勝1, 池 睦美2, 浅野 仁美2 (1.新潟大学医学部保健学科, 2. 新潟青陵大学看護学部看護学科)

Keywords:統合失調症、親、同居、自立、葛藤

【抄録】
【目的】本研究は精神保健福祉サービスを利用していない統合失調症の子と同居する親の自立の葛藤を明らかにすることを目的とする。それにより統合失調症をもつ子と親の相互の自立を促進するための新たな支援を検討する一助とする。【方法】対象は子と同居する親(以下、A 氏)1 名である。研究方法は半構造化面接によるインタビュー調査であり、調査内容は同居に対する問題意識や親亡き後に対する準備意識についてである。インタビューによって得られた録音データを逐語録にし、質的統合法(KJ 法)を用いて分析を行った。なお、本研究はB 大学倫理委員会で承認を受けた。【結果】A 氏は60 代後半の女性で、20 代後半の子(男性)と同居している。子は精神障害者保健福祉手帳の交付を受けて自立支援医療は利用しているが、通所や訪問型サービスは利用しておらず、日中は自宅で過ごすことが多い。インタビューの結果、A 氏の語りの内容から91 枚のラベルが抽出され、最終ラベルは6 枚となった。最終ラベルの関係性から結論文をストーリー化した。A 氏は「わらにもすがる思い:子の暴力に将来の不安を覚え病院家族会へ参加」した結果、「自身の人生の歩みを重視:子を心配しつつも自分らしく生きる」心境に至り、「子に対応する姿勢を変化:子への過干渉に注意を払う」ようになった。しかし、その一方では、「サービス利用の方針の不透明さ:サービス利用について話し合う機会を喪失」し、「サポート方法の不透明さ:手探り状態で子への対応を試行錯誤」していた。そうしたことから、「家族の将来の行き詰まり:別居への道のりに見通しが立たない」という認識が生まれていた。【考察】精神保健福祉サービスを利用していない子と同居する親は、子に対する具体的なサポート方法がわからず、子の将来について家族で話し合う場をもつこともできずにいることが推察され、A 氏は家族の先行きに見通しを立てられない不安を抱えていた。そのような不安を最小化し、親子相互の人生を尊重した生活を送るためには支援者とつなげる必要があると考えられる。支援者の介在によって親子相互の関係性をやわらげ、子の年齢にそぐわない親の役割を減らすことで子の自立を促すだけでなく、親の負担軽減や権利擁護にもつながると考える。別居を含む自立のあり方を見直し、多角的な方策を検討する必要がある。