第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

口演

口演1群 健やかに生まれ・育つことへの支援①

2022年11月8日(火) 11:30 〜 12:30 口演会場1 (302)

座長:山西 雅子

[口演M-1-2] 10 日目健診を受診しない褥婦への電話訪問の効果

-育児に対する前向きな感情に着目して-

山下 美奈, 山田 愛華, 森口 祐子, 光武 純子, 浦田 美保子 (佐世保共済病院)

キーワード:産後健診、電話訪問、育児支援、前向きな感情

【抄録】
【目的】A 病院では母親の育児不安の軽減を目的として、退院後1 週間前後に10 日目健診(以下健診)を任意で実施している。受診率は35%と低く、健診を受診しない褥婦は1 ヶ月健診まで介入がない。そこで健診を希望しない褥婦に対して電話訪問(以下訪問)を行い、訪問が育児に対する前向きな感情に効果があるかを明らかにした。【方法】2021 年7 月~ 10 月に出産した褥婦に、健診及び訪問前後で属性、健診や訪問への意見、PMS&PATS を調査した。結果は正規性確認後、マンホイットニーU 検定を行い、有意水準5%未満とした。訪問の結果は記述統計をした。アンケートはアイブリッジ株式会社のFreeasy で作成し、QR コード化して使用した。所属する施設の倫理委員会相当の機関の承認を得た。対象者には、口頭及び書面にて研究目的、無記名にする事、データは研究以外では使用せず研究後に破棄する事を説明し、アンケートの回答をもって同意を得たものとした。【結果】回答は健診35 名(初産婦12 名、経産婦23 名)、訪問7 名(経産婦7 名)であった。PMS、PATS は健診前後で差はなかった。健診及び訪問後にPMS&PATS の点数が上がった項目は41項目中、健診は30 項目、訪問は20 項目であった。健診で上がった項目は「リラックスした」「のびのびした」であり、訪問では「私は恵まれている」「私には心配してくれる人がたくさんいる」であった。健診及び訪問共に変化がなかった項目に「幸福な人生である」「家族に大切にされている」があった。訪問では「不安の相談が気軽にできた」「助産師と話ができ安心した」の意見が聞かれた。訪問により、育児不安が強い褥婦を健診受診へと導いた事例が1 例あった。【考察】健診では、実際に助産師が対面してアドバイスを行うため褥婦は不安を表出しやすく、リラックスして育児に取り組めたと考える。経産婦が多い訪問では、育児経験があっても不安を感じる事があり、助産師の介入が褥婦の前向きな感情に影響したと考える。育児不安の強い褥婦を健診へ導いた事から、訪問による介入の意義はあると考える。しかし、自分の人生や家族との関わりに関する項目については、一度の介入だけでは感情の変化が前向きになる事は難しかったと考える。研究の限界は、訪問の事例が少なく、訪問自体が褥婦の育児に対する前向きな感情に効果があることを明らかにできなかった事である。