第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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口演

口演1群 健やかに生まれ・育つことへの支援①

Tue. Nov 8, 2022 11:30 AM - 12:30 PM 口演会場1 (302)

座長:山西 雅子

[口演M-1-3] 熟練助産師による里帰り初産婦への退院指導

仮屋崎 文, 徳田 眞理子, 本田 美喜子, 後藤 麻琴 (東千葉メディカルセンター)

Keywords:里帰り初産婦、熟練助産師、退院指導

【抄録】
【目的】A 病院の里帰り分娩は全国平均より多く、受診回数が少ないために助産師は妊婦の十分な情報を得にくい。そのため里帰り初産婦には、助産師の経験年数の違いにより情報収集量や指導内容に差が生じ、何らかの影響を及ぼしていると考える。研究目的は、熟練助産師による退院指導の実態を明らかにし検討することで、助産師の育成につなげ、質の高い看護を提供することである。【方法】A 病院で20XX年11月~20YY年3 月までに里帰り分娩をした16 歳以上の初産婦42 名、熟練助産師7 名の退院指導を対象とした。倫理的配慮としては、A 病院の倫理審査の承認(第153 号)を得た。対象者の自由意思による承諾と不利益を回避するための配慮を行った。方法は退院指導を観察する観察法と半構造化インタビュー法を行った。解釈的現象学的研究の質的データ分析を行い、得られたデータを逐語録に起こし、退院指導の工夫と研究者が得た新たな知見をコード化・カテゴリー化した。【結果】同意の得られた里帰り初産婦、熟練助産師4 名のデータを分析した。熟練助産師による里帰り初産婦への退院指導から、6 個のカテゴリーと15 個のサブカテゴリーが抽出された。6 個のカテゴリーは、「退院後十分なサポートが得られるか判断する」「褥婦がセルフケアや育児が出来るようにする」「褥婦が自分のこととして捉えられるようにする」「効果的な指導となるよう時期や所要時間を工夫する」「一貫性のある指導を行うためにパンフレットを使用する」「褥婦のエンパワーメントを高められるように関わる」であった。【考察】熟練助産師は「里帰り初産婦」という枠組みではなく「初産婦」を意識した指導を行っており、情報のひとつとして「里帰り」を捉えていた。そのため熟練助産師は、「里帰り」にとらわれず、褥婦の個別性に応じた退院指導を行っていた。また熟練助産師は、産後に多くの情報で混乱しやすい褥婦に指導内容の要点を押さえ、理解しやすい工夫をしながらアプローチをしていた。さらに熟練助産師はスタッフ間で情報共有し、プライマリーだけでなくチームとして日々の関わりで指導が積み重ねられるよう働きかけていた。そして褥婦がエンパワーメントを高め、動機づけや孤立を防ぐための支援をしていた。本研究結果をもとに、熟練助産師が行っている退院指導を助産師の育成に反映できるようにし、退院指導の質の向上につなげていきたい。