第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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口演

口演1群 健やかに生まれ・育つことへの支援①

Tue. Nov 8, 2022 11:30 AM - 12:30 PM 口演会場1 (302)

座長:山西 雅子

[口演M-1-4] HTLV-1 キャリア相談で明らかになったインシデント

- HTLV-1 抗体検査未実施のキャリアマザー支援を通して-

滝 麻衣 (西九州大学看護学部看護学科)

Keywords:ヒトT 細胞白血病ウイルス1 型、HTLV-1 総合対策、HTLV-1 母子感染予防対策、診断関連エラー、相談支援体制

【抄録】
【目的】日本では、2010 年にヒトT 細胞白血病ウイルス1 型(HTLV-1)総合対策が発足し、2020 年にはHTLV-1 母子感染予防対策マニュアルが整備されているが、今回、妊婦健康診査(妊婦健診)でHTLV-1 抗体検査が実施されず、母乳育児の結果母子感染に繋がった症例を経験した。そこで、HTLV-1 抗体検査に係るインシデントの再発を防止する事を目的とした症例研究を行ったので報告する。【方法】方法は、聞き取り調査よる情報収集と、収集した情報の分析である。分析にはRoot Cause Analysis(RCA)を用い、時系列に整理したうえでエラー発生の要因と背景を明らかにした。本調査は所属施設の倫理審査の承認を得たうえで2018 年度から継続実施しており、今回は相談者から関係学会での周知を依頼されたため、個人の特定に繋がらないよう留意し公表することを説明のうえ同意を得た。【結果】症例は、第二子妊娠中のキャリアマザーである。第一子妊娠中にはHTLV-1 抗体検査未実施であったためHTLV-1 キャリアであることを知らずに母乳で哺育。第一子への母子感染が確定した。ヒアリングに基づくRCA 結果、第一子妊娠中のHTLV-1 抗体検査未実施の要因として、(1)HTLV-1 抗体検査実施期間中の妊娠異常に伴う緊急転院、(2)医療施設毎の検査実施時期の差異、(3)医療施設間の情報共有不足、(4)授乳指導前の検査項目の確認不足がインシデント発生につながったと推測された。【考察】HTLV-1 抗体検査は妊娠30 週頃までに実施することが強く推奨されており、母乳を介しての母子感染を防ぐための授乳指導についても明記されている。本症例は、医療施設間・医療スタッフ間でのコミュニケーションエラーを伴う診断関連エラーであると考えられ、重大なインシデントである可能性が示唆された。再発防止のためには、前述したインシデント発生要因への対応が基本となるが、本症例のように妊婦が複数の医療機関受診を余儀なくされた場合は特に双方でスクリーニング検査結果を確認することが期待される。同時に、妊婦の健康を支える医療従事者がHTLV-1 母子感染防止について関心を持ち、正しい知識の下で指導・助言できることが望ましいと考える。