第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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口演

口演10群 看護教育~基礎教育①~

Tue. Nov 8, 2022 11:30 AM - 12:30 PM 口演会場4 (102)

座長:西村 宣子

[口演M-10-1] 看護学生の高齢者の理解を深める授業研究(報告2)

関段 奈月1, 石田 智恵美2 (1.よしみず病院, 2.福岡県立大学看護学部看護学科)

Keywords:看護学生、対象理解、高齢者、教授方略

【抄録】
【目的】看護学生(以下学生と略す)が高齢者を理解するために収集する情報は、身体的なものにとらわれ易く時代背景や経験など過去の情報は少なく、情報を聞いても気づかず対象理解に生かせない傾向にある。そのため、高齢者の理解を深める教授方略を提案する。【方法】対象はA 看護専門学校で老年看護学概論の授業を受け研究協力の同意を得た42 名。学生が、事例で示している高齢者の言動と客観的状況を関連づけ言動の意味を考えケアに適応できれば、高齢者の理解を深めることに繋がると考え、それらのプロセスが実現できるよう教材を開発した。授業では時代による考え方の違い、高齢者の言動と客観的状況から価値観を、さらにケアとその理由を考えるようにワークシートを作成、教授活動の構成は個人ワーク、グループワーク、全体発表とし、振り返りシートを各授業に使用した。教授目標、評価基準に基づきワークシートの問いに対する記述と振り返りシートの自由記述内容から高齢者の理解の深まりについて分析した。本研究はA 大学研究倫理部会と研究協力施設の承認を得て、対象者に授業前と成績評価後に研究の趣旨・方法・同意と撤回、個人情報保護について説明し文書で同意を得た。【結果】授業1 回目は、高齢者が生きた時代の情報から、学生は現在を生きる高齢者と自分の生き方や思いの違いに気づき、2 回目は、高齢者の言動と客観的状況から高齢者の価値観や思いを推測し、言動の意味を考えていた。3 回目は、高齢者の考えや性格から行動を予測し、性格や価値観を重視した配慮をあげていた。自由記述では「自分の常識は自分だけの常識と思った」、「考えた援助を実際に活用していく」、「人の意見で気づきが得られた」、「今後は視野を広げたい」などの意見がみられた。【考察】学生は、高齢者を理解するために身体面以外に関する過去の情報を収集・分析し、高齢者の言動の意味を考える必要性を「知る」レベルから、「理解」してケアに「適応」できるレベルになったため、学生の高齢者の理解は深まったと考える。そして、自分と他者は違う存在だと理解し、他者の意見を取り入れ自分の考えを深める必要性も認識できたと推測する。よってワークシート・振り返りシートの活用と教授活動の構成、教材開発は、個々の学びの変化や気づきを促し、高齢者理解の思考のプロセスを段階的に実現し、学生の高齢者の理解を深めることに有効であったと考える。