第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

Presentation information

口演

口演10群 看護教育~基礎教育①~

Tue. Nov 8, 2022 11:30 AM - 12:30 PM 口演会場4 (102)

座長:西村 宣子

[口演M-10-2] 3 年課程看護学生の社会人基礎力向上への試みと縦断的変化

多喜 早苗 (富山市立看護専門学校)

Keywords:看護学生、縦断的変化、社会人基礎力、ポートフォリオ、他者評価

【抄録】
【目的】定期的な自己評価およびポートフォリオ作成、他者評価と面接の導入による社会人基礎力の変化を把握し、評価や育成方法の妥当性と有用性を検討する。【方法】対象:A看護専門学校に3 年間在籍した学生40 名。方法:1 年次よりポートフォリオを作成し、年2 回の頻度で「看護師養成における社会人基礎力測定尺度」を使用して自己評価を行った。2 年次以降は、教員による他者評価および面接を加えて実施した。総合点および各能力と能力要素についてFriedman 検定を行った。有意水準は5%とした。卒業時にアンケートを実施し、単純集計を行った。対象者に説明し、同意書の提出をもって同意を得た。尺度は開発者に文書で使用許諾を得た。【結果】有効回答は、3 年間の自己評価調査:7 名、2 年次~卒業時の自己評価・他者評価および卒業時アンケート調査:32 名。総得点およびすべての能力において、3 年間の自己評価および2 年間の自己評価・他者評価とも上昇した。「考え抜く力」のみ有意差がなかった。アンケートでは69.7%が成長を実感していた。傾聴力、主体性、計画力の成長を、実技試験を伴う授業や臨地実習、国家試験に向けた学習から実感した学生が多かった。記述回答ではポートフォリオは成長の実感や課題の明確化と目標設定の材料として活用されており、教員による他者評価から成長への気づきを得ていた。【考察】社会人基礎力は、上下しながら緩やかに成長していくことが明らかとなった。社会人基礎力育成には継続性と習慣化が重要であり、入学時から卒業時まで継続的に評価を行うことは習慣化のきっかけ作りとなっていた。ポートフォリオや教員による他者評価は学生の気づきを促進し、自己肯定感を高め内発的動機づけにつながると考える。学生自身が目標を設定し主体的に取り組む経験が社会人基礎力育成に有効であり、学生が興味関心を持って自ら一歩前に進めるように授業や学校行事等の教授方法を工夫することで、能力の向上が期待できる。また、考え抜く力の育成には、学生自身が目の前の問題にコミットできるように働きかけることや、「同一化的調整」による動機づけへの変容を促すために「取り入れ的調整」を促す教員のかかわり、発問を用いて学生の思考を言語化させることが必要だと考える。これらにより、学生自身がPDCA サイクルを回し社会人基礎力をスパイラルアップさせることが可能となるとの示唆を得た。