第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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口演

口演12群 看護教育~教育方法~

Tue. Nov 8, 2022 3:30 PM - 4:30 PM 口演会場4 (102)

座長:木下 千鶴

[口演M-12-5] 人工呼吸器装着患者の急変時を想定したロールプレイングがA 病棟看護師の認識にもたらす効果

田中 茜1, 藤橋 悠花1, 香川 春奈1, 大丁 里緒1, 高野 ちか子1, 上野 栄一2 (1.富山県リハビリテーション病院・こども支援センター, 2.奈良学園大学保健医療学部看護学科)

Keywords:ロールプレイング、人工呼吸器、臨床判断能力、慢性期病棟

【抄録】
【目的】難病や重症心身障害者が療養するA 病棟では、人工呼吸器装着患者の急変対応への不安が聴かれた。今回シミュレーション教育として全員がロールプレイング(以下ロープレとする)を実施する事で知識や技術の向上と不安感の軽減に繋がると考え調査を行った。【方法】A 病棟に勤務する研究同意が得られた看護師24 名に人工呼吸器装着患者の急変場面のロープレを実施した。実施前後で認識や知識、実践についてアンケート調査を実施し、その結果を経験年数毎に分類し、ウィルコクソンの符号付き順位検定を用い統計処理を行った。データ分析はSPSSを使用し有意水準は0.05 以下とした。参加者には強制力はなく可能な限りで良いこと、データの匿名性を保証し個人のプライバシーを保護すること、研究結果の公表について口頭と文書にて説明し同意を得た。【結果】ロープレ後は前と比べ32 項目中7 項目で有意な改善が見られた。有意差のあった項目は「バックバルブマスク(以下BVM とする)換気の必要性の理解」(0.04)「BVM での換気時の注意」(0.018)「生理学的徴候の評価」(0.004)「患者に合わせたBVM の使用方法」(0.006)「効果的なBVM 操作の実践」(0.024)「人工呼吸器の作動確認」(0.02)「医師への報告」(0.035)であった。また有意な改善のあった7 項目全てが経験年数5 年未満の看護師であった。事後アンケートでは「人工呼吸器装着患者への看護の不安は軽減したか」の質問に22 名があり、「今後もロープレの必要性を感じるか」の質問に24 名全員がありと回答した。【考察】ベナーは「2-3年目の看護師を1 人前レベルとし、この段階の看護師には多様で複雑な患者ケアを計画し調整する練習になるようなシミュレーションが役に立つ」と述べている。7 項目で5 年未満に有意差があったのは、この段階の看護師にロープレが効果的であったと考える。Kolb の学習理論によると⑴具体的な経験⑵経験の振り返り⑶経験の概念化⑷積極的経験を繰り返すことで実践力が向上するとされている。事後アンケートでは殆どの看護師が人工呼吸器装着患者への看護の不安は軽減したと回答した。これはロープレ実施により急変対応の実践力が身につき、臨床判断能力に自信を持つことができた事が不安感の軽減に繋がったと考える。また看護師全員が今後も継続的にロープレを行う必要性を感じている事からロープレが自発的な学習の動機にも繋がると考える。