第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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口演

口演13群 疾病・障がいとともに暮らすことへの支援

Tue. Nov 8, 2022 11:30 AM - 12:30 PM 口演会場5 (103)

座長:山田 仁映

[口演M-13-3] 慢性期脊髄損傷者の身体症状に関する困り事の調査

南田 由紀 (奈良県総合リハビリテーションセンター)

Keywords:慢性期脊髄損傷者、困り事、身体症状、質問紙調査法

【抄録】
【目的】A 病院に通院している慢性期脊髄損傷者の身体症状に関する困り事を明らかにする。困り事の具体的な内容や課題を把握した上で看護を実践することで、将来的に患者の生活の質の向上が期待できる。【方法】A 病院の外来に通院する慢性期脊髄損傷者88 名に、質問紙調査法を実施した。調査内容は、身体症状に関する困り事(痛み、しびれ、痙性、褥瘡、排尿、排便、自律神経過反射、筋力低下)を4 段階評価尺度(かなり困っている:1点~全く困っていない:4 点)で数量化し、選択回答してもらった。その結果を、Mann-Whitney U 検定、Spearman 順位相関(p<0.05) で分析した。倫理的配慮として、アンケートは無記名調査とし、対象者に文書及び口頭で説明し、郵送か次回外来受診時に持参してもらうことで回収し、質問紙の提出をもって同意を得た。【結果】アンケートは、88 名に配布し、67 名から回答を得られ、回収率は76.1%であった。排便の平均点が2.08 ± 0.97と低く、最も困っていることが分かった。困り事の相関関係をみると、痛みを困っている場合は、しびれも困っているという有力な正の相関関係があった(rs = 0.549)。困り事について、基本的属性を2 群間に分け分析すると、痛みについては、65 歳以上(p=0.026)や受傷からの期間が10 年未満の人(p=0.023)が有意に困っていた。しびれについては、不完全麻痺の人(p=0.026)や65 歳以上の人(p=0.01)が有意に困っていた。褥瘡については、完全麻痺であったり(p=0.0009)、胸・腰髄損傷であったり(p=0.019)、受傷からの期間が長い(p=0.041)と有意に困っていた。【考察】最も困っているのは排便であったが、便失禁すると臭いが発生するため、社会生活を送る上で大きな困難を伴うことが考えられる。痛みとしびれの困り事は、有力な正の相関関係にあることから、受傷からの期間が10 年未満、年齢が65 歳以上で不完全麻痺の人には、痛みやしびれの状態について積極的に声掛けを行う必要がある。そして、松本らは、脊髄損傷の疼痛にはピアサポートが有効であると述べており、患者間での交流の場を作ることも必要である。完全麻痺の胸・腰髄損傷者で、受傷からの期間が長くなっている人には、褥瘡好発部位の観察から行い、積極的に褥瘡発生予防につとめていく必要がある。