第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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口演

口演15群 穏やかに死を迎えることの支援

Tue. Nov 8, 2022 3:30 PM - 4:30 PM 口演会場5 (103)

座長:橋口 周子

[口演M-15-2] 後期高齢者が延命治療に対する意思を家族に伝えていない要因

中村 香織1, 山本 真実1, 松原 朱里1, 中川 法子1, 塚原 節子2 (1.北陸中央病院, 2.東京医療学院大学保健医療学部看護学科基礎看護学)

Keywords:延命治療、地域包括ケア病棟、意思

【抄録】
【目的】A 病棟は地域包括ケア病棟であり、患者の生活史、価値観に加え、今後への希望、最期までどのように生きていきたいかという患者の思いの聞き取りをしている。その中で延命治療に対して家族と話し合ったことがないと回答する患者も少なくなかった。後期高齢者が延命治療に対する意思を家族に伝えていない要因を明らかにする。【方法】対象:在宅からA 病棟に入院した後期高齢者であり、症状が安定し在宅に退院予定の患者。期間:20XX 年9 月から20XX 年11月。方法:半構造面接法にて実施。伝えていない理由を尋ね、逐語録に起こしてコード化しカテゴリー分類した。倫理的配慮:所属施設の倫理委員会で承認後に実施した。【結果】対象者は8 名のインタビューによる生データから10 個のサブカテゴリ―と<延命治療について考える機会の不足><家族に任せる気持ち><家族に伝えることへのためらい><家族への思いやり><頼ることができないあきらめ>の5 個のカテゴリーが抽出された。【考察】対象者は初めて入院した患者や、病気を持ちながらも比較的健康状態は安定していた患者であった。そのため延命治療について考えるのはまだ先のことと捉えて、延命治療に対する意思を明確に持っていないことから<延命治療について考える機会の不足>があったと考えられた。また家族を信頼し、自分の思いをくんだ判断をしてくれるだろうという<家族に任せる気持ち>を持っている患者もいた。一方で、延命治療に対する意思を持っていても家族に伝える機会がなく、家族に言い出しにくいこともあり<家族に伝えることへのためらい>が生じていると推察された。延命治療に対する話は死を連想させ、家族を悲しませたくないという<家族への思いやり>が伝えていない要因になっている。長江は「わが国には物事をはっきり言うことを嫌う、言わなくてもわかってもらえる、という“ 和やかな空気を望む” という他者への自己主張が好まれない土壌がある。」と述べている。また、近年、家族形態の変化に伴い後期高齢者のみの世帯が増加しており、延命治療に対する意思を支援してくれる家族が近くに存在しないために、自分の事は自分で考えなくてはいけない、家族に<頼ることができないあきらめ>が伝えていない要因になっていると推察された。