第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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口演

口演19群 看護職の業務に対する困難感①

Tue. Nov 8, 2022 11:30 AM - 12:30 PM 口演会場7 (105)

座長:梅内 美保子

[口演M-19-4] 在宅での終末期ケアに関わる訪問看護師の困難感と課題

三宅 陽子1, 赤井 由紀子2 (1.みたき在宅ケアセンター, 2.四天王寺大学看護学部)

Keywords:訪問看護、看取り、終末期ケア

【抄録】
【目的】A 訪問看護ステーションの併設病院は、2018 年6 月に緩和ケア病棟、2019 年7 月に訪問診療が開始となり、それに伴い訪問看護利用者の在宅看取り件数が増加してきた。在宅医療では医療の知識、技術を持った訪問看護師の果たすべき役割は大きいが、看護師からはケアへの判断や責任の負担、不安の言葉が聞かれるようになった。そこで、終末期ケアを実践している訪問看護師の思いを調査し、現場に即した思いから現状を分析し課題を明らかにすることを目的とした。【方法】対象者はA 訪問看護ステーションの看護師6 名(常勤オンコール有4 名、非常勤2 名)である。看取りに関する思いについて質問紙による自由記述の内容から質的帰納的分析を行った。本研究はB 病院倫理審査委員会の承認を得た。【結果】平均年齢46.8 歳、看護師経験年数の平均20.8 年、訪問看護師経験年数の平均5 年である。6 名全員が在宅での終末期ケアに困難や不安、負担を感じていると回答していた。看取りに関する看護師の気持ちは、49 のコードより、6 つのサブカテゴリー、3 つのカテゴリーが抽出された。「終末期を支えるケア実施の困難」では、終末期の知識、技術、コミュニケーション能力不足。本人、家族の思いに寄り添うことができない無力感から構成されていた。「心情が揺れ動く家族ケア」では、死の迎え方、語りができておらず満足のいく看取りへの難しさから構成されていた。「看取りを実施した看護師の満足感、達成感」では、家族との信頼関係が築け、本人、家族の意向に沿った穏やかな死を迎えられたから構成されていた。【考察】在宅で看取りを行う訪問看護師は、終末期ケアは短期間で終了してしまうケースが多く信頼関係を築くのが難しいと感じていることがわかった。在宅看取りの意向が対象者の状態悪化や衰弱、認知症などで意思確認ができていない現状がある。また、自宅で看取ることへの迷いや不安を示す家族の多さが、終末期ケア実施の困難感に影響していると考えられた。訪問看護導入から死亡までの期間が短いと満足のいく看取りを実現することは困難である。医療の必要度から訪問看護の必要性を評価するだけでなく訪問看護師との信頼関係構築という視点から、訪問看護導入や終末期ケア開始の時期の判断が重要であると考えられた。早期に良好な関係を築き、死について語り、受容と迎え方について十分話し合うことが必要である。