第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

口演

口演23群 精神看護③

2022年11月9日(水) 12:40 〜 13:40 口演会場1 (302)

座長:田上 美千佳

[口演M-23-3] 行動制限最小化委員会における活動報告

-病棟訪問による効果の検証-

佐伯 昌彦, 田部井 伸一, 西浦 由洋 (東京都立松沢病院)

キーワード:行動制限最小化、事例検討、病棟訪問

【抄録】
【目的】A 病院は精神科救急、急性期医療、身体合併症医療、認知症医療、思春期・青年期医療等を提供している精神科専門病院である。2020 年度から行動制限最小化委員会の活動として、院全体の身体拘束や隔離の対応困難な事例を抽出し、定期的に各病棟へ訪問活動をしている。病棟訪問活動について調査・分析した結果、活動の効果が明らかになったので報告する。【方法】2021 年6 月~ 2022 年1 月の入院患者を対象に、各病棟の行動制限台帳から1 ヵ月以上行動制限を実施している患者を抽出した。委員会の事例検討結果を踏まえ委員会メンバーが当該病棟を訪問し行動制限最小化の取り組みを提言した。事例患者の訪問実施後2 週間と1 か月の行動制限時間を調査した。また、調査時に聞き取りした看護師の意見をコード化、類似性を確認しカテゴリー化した。【結果】6病棟を対象に訪問活動を計6 回実施した。事例患者の疾患は統合失調症5 例、前頭葉てんかん1 例であった。訪問時に事例患者や看護師の声を聴き、行動制限最小化委員会の検討内容について提言した。その結果、6 事例中の3 例は、訪問2週間後に行動制限時間が約4 割短縮し、2 例は時間の変化は無く、1 事例は転院となった。聞き取りした看護師の意見は、8 個のコード、5 個のサブカテゴリ―、カテゴリーは、〈心強さ〉〈きっかけ〉〈意識の向上〉〈期待〉の4 個が抽出された。委員会メンバー訪問時は、行動制限に関する悩みや困っている看護師の声を聞いて課題を共有したことや、根気強い取り組みに対して労いの言葉をかけた。その結果、「患者対応について一緒に考えてもらうことが良い」「いかに効果的な対応ができるか考えるようになった」「今後も病棟訪問を継続して欲しい」等の肯定的意見が聞かれた。【考察】訪問病棟は、日々行動制限最小化に向けた検討をしているが、対応困難事例の取り組みに苦慮している現状がある。委員会メンバーの支持的な関わりは、病棟医師・看護師にとって心強く、自身をもって行動制限最小化に踏み切るきっかけとなった。また、委員会メンバーが訪問時に紙面情報では得られ難い患者の声に耳を傾け、病棟の視点とは異なる幅広い対応策を提言することで、職員の意識の向上に繋がった。さらに、今後も病棟訪問を継続して欲しいという委員会活動への期待も、取り組みの後押しになっていると考えられる。