第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

口演

口演26群 健やかに生まれ・育つことへの支援②

2022年11月9日(水) 12:40 〜 13:40 口演会場2 (303)

座長:松井 弘美

[口演M-26-3] 小児看護における実践能力段階に応じた倫理観を養う取り組み

小橋口 里英 (東京慈恵会医科大学附属病院)

キーワード:小児看護、倫理的感受性、実践能力、倫理観、看護観

【抄録】
【目的】小児看護では成長発達過程にあるという対象特性から、特有の倫理的問題に直面することがある。「小児看護の日常的な臨床場面での倫理的課題に関する指針」では、日頃から倫理的感受性を磨き、臨床場面での倫理的問題に気づくよう努力することが提言されている。今回、倫理的問題を検討した事例を基にカンファレンスを行ない、その後アンケート調査を実施した。その結果から、実践能力段階ごとの特徴を踏まえ、効果的に倫理観を養うためにはどのような取り組みが必要かを明らかにする。【方法】A 病院のB 病棟とPICU で働く看護師36 名で、カンファレンス(余命短い難病児への苦痛を伴う医療的処置の是非、児の人間らしく生きる権利を擁護する為に医療者としてできることの検討)を行ない、その後アンケート調査を実施した。倫理的配慮:アンケートは無記名、回答は自由意志とし、中が見えない専用のボックスで回収した。【結果】有効回答数:28(配布36)回答率:77.7%、属性:3 年目以下(A 群)60%、4 ~ 9 年目(B 群)25%、10 年目以上(C 群)14% ⑴カンファレンスで印象に残ったこと:[ それぞれの倫理観に関すること] 全体の32%(A群の内47%、B 群の内14%、C 群の内0%)[ 看護師の役割に関すること] 全体の28%(A 群の内11%、B 群の内42%、C 群の内75%)⑵日常の看護の中で意識するようになったこと:[ 家族との関わりに関すること] 全体の36%(A 群の内41%、B 群の内28%、C 群の内25%)[ 看護師の役割に関すること] 全体の25%(A 群の内17%、B 群の内28%、C群の内50%)【考察】A 群からC 群へ移行するにつれ、倫理への認識が人としての倫理観や実践場面に関することから看護師としての倫理観や役割意識へと変化していることが明らかになった。これは基礎教育での知識を、臨床での実践と結び付けることで倫理観を養う体験を繰り返していくことや、チームの中で求められる役割が変化していくことによるものと考えられる。先行文献でも看護師の倫理的意思決定には、看護経験の量が倫理的問題を認識する能力を左右するといわれている。より効果的に、早い段階から倫理観の高い看護を実践できる看護師を育成する為には、日々の看護の中で多様な意見を表出することを保障し、それぞれの看護観や倫理観を話し合う機会を持つことが必要であると考えられる。