第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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口演

口演3群 セルフケア能力向上への支援

Tue. Nov 8, 2022 3:30 PM - 4:30 PM 口演会場1 (302)

座長:永井 健太

[口演M-3-4] 在宅における難渋する爪ケアの考察

-自分らしい生活を続けるために-

村田 佳香, 内城 順子, 間宮 直子 (大阪府済生会吹田病院)

Keywords:爪ケア、在宅、高齢者、地域包括ケアシステム

【抄録】
【目的】急性期病院に勤務する看護師が、関連する訪問看護ステーションへ1 年間出向した際、爪ケアに難渋している人々に遭遇した。この経験を通し、地域包括ケアシステムを活用した爪ケアは不可欠な看護ではないかと考えた。そこで、自己の看護実践を振り返り、その理由を明らかにする。【方法】期間:2019 年6 月~ 2020 年5 月。対象者:在宅で爪ケアに難渋した7 名。調査項目:年齢、性別、生活背景、ADL、爪変形の種類、爪ケア難渋の理由。調査方法:看護記録で情報収集。倫理的配慮として、所属施設の看護部倫理委員会の承認を得た。また、対象者に写真撮影の許可と個人情報の保護、十分な匿名性を説明し同意を得た。【結果】平均年齢、84.6(±8.1)歳、性別は、男性4 名、女性3 名であった。生活背景は、独居2 名、老老介護3 名、超老老介護2 名(認認介護1名含む)で、ADL(障害老人日常生活自立度)は、A1:3 名、B1:2名、C2:2 名であった。爪変形の種類は、肥厚爪4 名、巻き爪1 名、陥入爪1 名、鉤彎爪1名であり、明らかな爪白癬保有者は、5 名であった。爪ケア難渋の理由は、ケアに手が回らない(介護者)、ケアに自信がない(訪問看護師)、特に気にならない(対象者)等があった。共有した事由は、いわゆる一般の爪切りでは既に切れないことがあげられた。【考察】超高齢社会に突入した本邦では、介護者の高齢化も伴い、脆弱な介護基盤が問題となっている。日常の介護では、生理的欲求を満たすことが優先され、爪までケアが行き届いていないと考えられた。また、訪問看護師は爪変形のケア経験が少ないことから、積極的なケアに不安を抱えていた。さらに高齢者は、視力・握力・ADL・認知力低下によるセルフケアへの無関心から、爪ケアが困難になっていたと推測される。このような環境下において、命に直結することがない爪ケアは、在宅でのケアから置き去りになっていたとも推察される。したがって、高い技術を持った看護師が所属し、爪変形のケア経験が豊富な急性期病院と地域との間で、情報や技術を共有していく必要がある。こうした連携は、難渋する爪ケアが解決する糸口になると言える。地域包括ケアシステムでの爪ケアの実践は、高齢者の介護予防・健康寿命の延伸につながり、自分らしい生活を続けるための一助になると考えられた。