第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

口演

口演32群 在宅療養移行支援⑤

2022年11月9日(水) 15:30 〜 16:30 口演会場3 (304)

座長:南里 玲子

[口演M-32-2] 孤立する患者を救うSDH(健康の社会的決定因子)の視点と『気になる患者訪問』

片岡 祐美子, 三宅 和子, 塩尻 由希子 (総合病院水島協同病院)

キーワード:SDH、独居、『気になる患者訪問』、外来看護

【抄録】
【目的】外来では通院中断患者のフォローアップとして電話掛けや『気になる患者訪問』を行えるシステムがある。事例を通して医療者が疾患だけで無く患者の生活背景にも目を向け、SDH を考えた視点を含めて患者をみていく事の重要性と、外来看護の在り方について考察する。【方法】事例研究。対象者は20XX 年に結腸膀胱瘻でストーマ造設後の70 代男性A 氏1 名。家族とは疎遠で独居、生活保護を受給中。A氏は術前の様子、入院日を間違えて入院準備をして来院する事もあったため初診時より気になる患者であった。術後は外科診察とストーマ外来でフォローしていた。術後5 年間は定期受診できていたが急に受診が途切れ、腰痛で救急外来受診時に生活が成り立っていない状況を感じた。A 氏の日常生活の様子を確認するために『気になる患者訪問』のシステムを利用して訪問した経緯を振り返る。認知機能低下のため後見人に同意を得て研究を実施した。【結果】救急外来ではタクシー会社から料金滞納のため乗車拒否された様子、整容も保てていない状況に「社会生活が送れていないのではないか」との疑念を抱き早期に訪問に結びつけた。訪問の2 ヵ月前の介護保険申請で要支援1 となり配食サービスの介入あり。訪問では真冬にもかかわらず窓を開け放し、荒れた室内を壁伝いに歩くA 氏がいた。貴重品管理ができず携帯電話も故障し、腰痛のため外出も出来ない状態だった。ストーマパウチは剥がれかけており中には暗赤色の排液の貯留があり、室内に黒色の硬便が多数落ちていた。ストーマ管理も行えず生活も破綻している状況を目の当たりにした。サービス調整と検査加療目的で入院となった。入院後介護保険見直しや後見人申請を行い、現在A 氏は老人保健施設にて生活をされている。【考察】A 氏は5 年前から通院中であり、その生活歴や生活状況から医療者はA 氏を気にかけていた。受診が途切れ、救急外来で会ったA 氏の姿や言動に違和感を覚えたのは、普段からSDH の視点で患者の背景に注目していたからと推察する。また、救急外来を受診した機会を見逃さず、生活が大丈夫かとA 氏が直面している困難に想像力を巡らせ、すばやく『気になる患者訪問』システムを利用して訪問できた事で、A 氏を救う事につながった。外来看護師として診療の補助に加えて生活を視る事を強化し、高齢独居、困った人を早期に支援できるSDH の視点を充実していきたい。