第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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口演

口演32群 在宅療養移行支援⑤

Wed. Nov 9, 2022 3:30 PM - 4:30 PM 口演会場3 (304)

座長:南里 玲子

[口演M-32-3] ストーマセルフケアが確立していない状況で退院してきた高齢夫婦への支援

-ストーマ管理困難事例-

中村 ゆかり (洛和会介護事業部)

Keywords:老老介護、ストーマセルフケア、家族指導

【抄録】
【目的】ストーマセルフケアの未確立な状態で退院となるケースが増え、訪問看護でストーマセルフケアを支援することが必要となってきている。今回、陥没ストーマで抗癌剤治療による皮膚障害や頻回な便漏れを認め、ストーマ管理に拒否的であった介護者である夫を指導しストーマセルフケアを確立することができた事例を通して、高齢夫婦へのストーマ管理指導過程を振り返り、家族への支援について検討することを研究目的とした。【方法】ストーマの管理状況、介護者である夫の管理能力や思い、指導内容を含めた看護介入について、退院サマリー、日々の訪問看護記録からデータ収集し、「自己効力感」を用いて、家族支援について検討した。本研究は、所属施設の倫理審査委員会に相談の上、所属施設の倫理指針に基づき、個人が特定されないように配慮して行った。【結果】退院当初から2ヵ月目頃までは、夫は「自分がしても失敗してしまう」と、交換手技が複雑であったこともあり、ストーマ交換に参加しなかった(結果予期否定期)。退院3ヵ月目頃に、ストーマ交換は難しいが、手先の器用な夫にストーマ処置に使用する穴あきシートを貼ったオムツの作成を依頼すると、積極的に参加するようになった。看護師のねぎらいの言葉掛けに「できることはしていきたい」と話し、簡単で実現可能なことから成功の体験を積み重ねることで、「成功体験」を実感した(結果予期肯定期)。退院5ヵ月目になると、妻がストーマ交換に苦労する様子をみて、皮膚を引っ張る介助を申し出、一緒に貼り替えるようになった(「成功体験」や「代理体験」の高まり)。退院後6ヵ月目には「妻が貼りにくそうなのでストーマ交換を教えて欲しい」と申し出があり、ストーマセルフケアを習得し(言語的説得の高まり)、便が漏れない工夫までするようになった。【考察】「結果予期」、「効力予期」をアセスメントし、「効力予期」の4つの情報源を活用したアプローチを行うこと、簡単なことから徐々に難しいことへと段階的に計画することが、家族支援には必要であることが明らかになった。野川らは「訪問看護師の役割はセルフマネジメント能力を高めること」と述べており、患者・家族の気持ちを尊重し、自らが主体的に取り組めるように支援することが重要であることが示唆された。