第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

口演

口演35群 対象を尊重する看護

2022年11月9日(水) 14:00 〜 15:00 口演会場4 (102)

座長:増渕 美恵子

[口演M-35-2] 回復期リハビリテーション病棟入院中に発症する感染症の実態と課題

-感染症がリハビリテーション効果に与える影響とケア介入の検討-

島田 由美, 村田 真生, 土倉 郁美子, 中田 景子, 守山 和江 (南砺市民病院)

キーワード:回復期リハビリテーション病棟、感染症、FIM、ケア介入

【抄録】
【目的】回復期リハビリテーション病棟入院中に新たに発症する感染症が、リハビリテーション(以下リハビリ)効果に及ぼす影響を明らかにし、今後の看護ケア介入のあり方を検討する。【方法】2020 年4 月から2021 年3 月の1 年間にA 病院回復期リハビリ病棟に入院し、新規発症の感染症に対して抗菌薬を投与された患者を対象とした。退院時と入院時のFIM 得点の差からFIM 利得を算出しリハビリ効果の指標とした。統計学解析は統計ソフトEZR を用いて群間の比較と多変量解析を行い、臨床背景を検討した。有意水準はp<0.05 とした。本研究は匿名化された情報のみを解析して行われたものである。【結果】抗菌薬を投与された患者は45 名であり、うち2 名は研究期間中に複数回の感染症を併発していた。45 名に見られた48 例の感染症を対象とした。対象患者の平均年齢は82.7 歳。男性19 例、女性26 例。基礎疾患は脳卒中18 例、廃用症候群15 例、骨折11 例、脊髄損傷1 例であった。感染症としては尿路感染症(以下UTI)が最も多く(32例、66.7%)、肺炎がこれに次いだ(6 例、12.5%)。UTI 症例のうち6 例は尿道留置カテーテル抜去後にUTI を発症していたが、いずれも抜去後48 時間以上経過していた。UTI 群と非UTI 群を比較すると、間欠導尿を施行されている患者の割合はUTI 群46.9%、非UTI 群12.5% であり、UTI 群で有意に高かった(p=0.026)。FIM 利得はUTI 群16.2 点、非UTI 群27.6 点でありUTI 群で低い傾向にあった(p=0.051)。UTI 発症に影響する因子を明らかにするため、年齢、性差、および間欠導尿実施の有無を説明変数としてロジスティック回帰分析を行ったところ、UTI 発症と間欠導尿との間には、統計学的に有意の関連が見られた。(オッズ比8.84、95% 信頼区間1.30-60.1、p=0.0259)【考察】回復期リハビリ病棟入院中に新たに発症する感染症としてUTI が最多であり、尿路以外の感染症と比較するとUTI がリハビリ効果をより阻害する可能性が示唆された。以上より、リハビリ効果に悪影響を及ぼす可能性があるUTI を予防するためには、排尿動作に必要な運動機能や認知機能も保持されていなければならない。看護師だけではなく、多職種による総合的な排尿ケアを積極的に展開していくことが重要と考えられた。