第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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口演

口演37群 リスクマネジメント

Wed. Nov 9, 2022 9:30 AM - 10:30 AM 口演会場5 (103)

座長:野田 洋子

[口演M-37-1] インシデントカンファレンスにおけるSHELL分析導入の効果と今後の課題

久保 千夏, 高橋 里美, 山﨑 朝恵, 持田 耕平, 林 裕子 (広島大学病院)

Keywords:インシデントカンファレンス、看護、SHELL 分析

【抄録】
【目的】インシデント防止策検討後も、同様のインシデントを繰り返していた。そこで、起きた背景を効果的に分析するためにSHELL 分析を導入した。導入前後のインシデントカンファレンスで検討された対策案を比較しSHELL 分析導入の効果について検討する。【方法】(研究期間)2020 年度4月1 日~ 3 月31 日(研究対象)インシデント件数〈導入前群〉 4 月~ 9 月87 件〈導入後群〉10 月~ 3 月33 件(データ収集方法)インシデントレポートおよびカンファレンス記録から収集する。(分析方法)SHELL 分析導入前後でのインシデント件数について2 群間比較を行った。統計学的検定はマンホイットニーのU 検定を用いて比較検討し有意水準は5%未満とする。対策についてコード化し類似性に沿ってカテゴリー化を行い質的に分析した。(倫理的配慮)データ入力の際はコード化し、個人が特定されないように配慮すること、収集したデータは統計的に処理し、研究目的以外には使用せず、研究終了後はデータを消去する。本研究の目的以外に本研究で得られた情報を利用しない。A 病棟スタッフへは情報公開し了承を得た。【結果】インシデント発生件数は導入後に減少した。インシデント内容分類では、薬剤関連が有意差を認めた(P < 0.005)が、転倒転落では有意差を認めなかった。導入前後のインシデントの対策案は、4 個のカテゴリー、10 個のサブカテゴリーに分類された。導入前は〈指示や決まり事について〉のカテゴリーにある「6R を確実にする」などの対策が検討されていたが、導入後は〈新しいルールで業務を行う〉のカテゴリ―にある「注意喚起が必要な薬剤はポスターを貼る」などが検討された。【考察】SHELL 分析導入によりインシデント発生要因を5 つに分類したことで情報整理や事例の全体像が把握し易くなり、適切な再発防止対策が検討できたと考える。内容分類別では、SHELL 分析導入後は、業務手順に着目した対策が検討されるようになり薬剤関連のインシデントが著明に減少した。この結果から《個人が確認する》から《ルールやマニュアルについて》へとスタッフの視点が変化しており、より具体的な対策の検討をするようになったと考えられる。しかし転倒転落のインシデント件数は導入前後に変化がなかったため、今後も患者の状況、環境、看護師の知識・技術など多角的な視点で要因分析し対策を検討する必要がある。