第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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口演

口演37群 リスクマネジメント

Wed. Nov 9, 2022 9:30 AM - 10:30 AM 口演会場5 (103)

座長:野田 洋子

[口演M-37-2] モンゴル国A 病院のモンゴル人看護師のリスク感性の分析

藤川 理恵1, 高開 登茂子2, 久米 博子2, 三木 幸代2, 原田 路可2, 加根 千賀子2, 赤池 雅史1, 楊河 宏章2, 苛原 稔3 (1.徳島大学大学院医歯薬学研究部医療教育学分野, 2.徳島大学病院, 3.徳島大学大学院医歯薬学研究部)

Keywords:リスク、リスクマネジメント、モンゴル人看護師、リスク感性

【抄録】
【目的】モンゴル国A 病院におけるモンゴル人看護師のリスク感性を明らかにする。【方法】本研究は、モンゴル国A 病院(以下、「A 病院」とする)で看護師が配属されている全12 部署の副看護師長(副看護師長不在部署は看護師長)各1 名ずつ、計12 名のモンゴル人看護師を対象とした質的記述的研究である。データ収集方法は、インタビューガイドを用いた半構造的面接法を用いて実施した。データを逐語録にし、対象者のリスク感性に関する部分を最小単位に抽出してコード化し、意味内容の類似性と差異に着目して分類しカテゴリー化した。本研究は、所属施設の生命科学・医学系研究倫理審査委員会の承認を得て実施した。【結果】研究協力者12 名のモンゴル人看護師の看護師経験年数は平均12 年、A病院での看護師経験年数は平均2 年であった。分析の結果、A 病院におけるモンゴル人看護師のリスク感性として、<常に多様なリスクに晒され安心できないと認識><リスク回避を意図した責任ある行動><リスクの経験を活かした教育体制の整備><組織の問題として俯瞰的対応を切望><リスク回避のために適切な労務管理を渇望><自分自身のメンタルをコントロール><医療従事者、患者間での良好な関係性を維持>の7 つのカテゴリーが抽出された。【考察】A 病院のモンゴル人看護師は、常に多様なリスクに晒され安全が保障されない状況下にいる危機感を感じているがゆえに、リスクに備えての準備状態を整え、患者の健康や命を守るために、リスク回避を意図した行動をとっていることが明らかになった。また、リスクマネジメントに関する教育体制や適切な労務管理などを含め、リスクを個人の問題ではなく、組織の問題として俯瞰的に捉え解決する体制を構築してほしいと願っており、その背景には、患者に良質なケアを提供するために、組織の一員として守られ、安心できる環境下で、健康に働き続けたいというA 病院のモンゴル人看護師の思いが表れていた。さらに、焦りや集中力の低下、精神的な不安定さがリスクにつながってしまうという経験を通して、自分自身のメンタルのコントロールや互いに尊重し合える関係性を維持することが、リスク回避の鍵になると考えていた。今後は、看護師だけでなく他職種のリスク感性も明らかにすることで、A 病院における今後のリスクマネジメントの指針につながると考える。