第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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口演

口演4群 精神看護①

Tue. Nov 8, 2022 11:30 AM - 12:30 PM 口演会場2 (303)

座長:田上 美千佳

[口演M-4-4] COVID-19 患者の受け入れを経験したA 病院精神科開放B 病棟の看護師が受けた心理的影響と有効であった環境要因の実態調査

今井 佐代子, 佐伯 幸治 (国立精神・神経医療研究センター)

Keywords:COVID-19、心理的影響、精神科看護師、対処

【抄録】
【目的】COVID-19 患者受け入れを経験したA 病院精神科開放B 病棟の精神科看護師が受けた心理的影響と対処、及び対処に有効であった内的・外的な環境要因を明らかにする【方法】B 病棟で1 年以上勤務し2020 年6 月~ 7 月に精神疾患を持つCOVID-19 患者の対応を行い同意が得られた看護師10 名に対してインタビュー調査を行った。インタビュー内容の逐語録からカテゴリーを抽出し、意味内容の類似性によりコアカテゴリーとし質的帰納的に分析した【結果】心理的影響は《期待と不安》《精神科看護師としての不安や葛藤》などの10 コアカテゴリー、内的環境要因は《知識・技術の習得》《価値観の共有》などの9 コアカテゴリー、外的環境要因は《他者の関心や情緒的支援》《差別偏見の被害がない》などの8 コアカテゴリーが抽出された。個々の精神科看護師が行っていた対処は、他者に心配させぬよう振る舞う、報告相手と時期を選び周囲を気遣う、業務に没頭する事で抑圧感情から意識を逸らす、適応出来ない後輩に対し明るく振る舞い職場環境改善にも努め、適応までの過程を俯瞰し声を掛ける、感染エリアに率先して入るなど経験者としての行動も見られた。さらに学習や他看護師に相談するなど不安や恐怖を拭おうとする知識習得行動、自らを鼓舞し士気を上げる、私生活を充実させる、同僚と不安や葛藤を共有する、物理的距離を置いた他者と電話やオンラインで繋がり交流を図るなどの対処行動がみられた。また心理的影響や有効でなかった外的環境要因から今後の課題も抽出された【考察】第一線で患者と向き合う看護師は、長期戦が予想される中でも危険に曝されながら患者対応に専念し、個々が心身のバランスを良好に保つため効果的なコーピングを行っていた。また抽出した心理的影響は先行研究で示されたものとほぼ一致しており、未知の業務への《期待と不安》、COVID-19 の患者に対し〈感染でより敬遠され悔しい〉〈苦しみを理解出来ない自責の念〉などの《精神科看護師としての不安や葛藤》の2 カテゴリーはB 病棟で働く看護師の傾向が示された。精神科看護師は平時より様々なストレスに柔軟に対処する力が要求されており、本研究でも個々のストレス・マネジメント能力やコーピング、ピアサポートが十分機能していた事が示唆された。今後は得られた結果を生かした看護師のメンタルヘルス支援の検討に取り組む必要がある。