第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

口演

口演40群 新型コロナウイルス感染症下の看護~看護職の心理②~

2022年11月9日(水) 15:30 〜 16:30 口演会場5 (103)

座長:植田 みゆき

[口演M-40-2] COVID-19 患者受け入れ開始から1 年後に感染対策と患者へケアを行う間で看護師が感じたジレンマの変化

真崎 涼子, 小杉 実香, 長田 夕子 (東京都立多摩総合医療センター)

キーワード:COVID-19、ジレンマ、感染対策

【抄録】
【目的】昨年の先行研究から看護の迷いや倫理的葛藤といったジレンマを抱えていた。現在受け入れ当初とは違うジレンマを抱えている可能性を考え、今回COVID-19 患者受け入れ開始から1 年後の看護師のジレンマの変化を明らかにする。(用語の定義)ジレンマ:感染対策と患者へケアを行う間で感じた板挟みの気持ち【方法】本研究はA 病院の看護部倫理委員会の承認を得た。データ収集期間はX 年8 月~ 10 月、対象はA 病院当該病棟の勤務者で先行研究にてインタビューを行い本研究の同意が得られた8 名。分析は半構造化面接で得たデータをコード化、質的記述的分析を用いた。【結果】インタビューの結果から計337 個のコードが抽出された。ジレンマ変化ありのカテゴリーは4 個抽出され、「看護の質の向上」は〈出来るケアは変わらないと気付いた〉など、「受容」は〈現状を受け入れた〉など、「周囲の状況」は〈周囲の目が変わった〉など、「ネガティブな気持ちへの変化」は〈心に余裕がなくなった〉などを表し、サブカテゴリーは16 個、コード数は181 個であった。変化なしは前回同様に「感染対策疲労」「倫理的葛藤」「やりがいが見出せない」の3 個のカテゴリーが抽出され、サブカテゴリーは11 個、コード数は156 個であった。相関図にすると、ジレンマの変化ありと変化なしは相互に関係しており〈働く環境が整った〉のサブカテゴリーを中心に、看護師のポジティブとネガティブな感情に分けられた。【考察】COVID-19 患者受け入れから時間が経ち、看護師を取り巻く〈働く環境が整った〉ことで、看護師は現在の状況を「受容」し、ケアを工夫したことで「看護の質の向上」など看護師にポジティブな感情を引き起こしたと考えられる。一方で、環境に慣れ、新たな気付きから「ネガティブな気持ちへの変化」といった新たなジレンマが形成された。さらに〈面会の手立てがない〉といった感染対策上守らなければならないルールにより看護師が「倫理的葛藤」を感じることについてはジレンマが解消されることはなく、看護師のネガティブな感情を引き起こした。この結果よりCOVID-19 病棟でのケアの方法の迷いのジレンマは1 年経過する中で体制が整い、ケアを工夫していく中で解消されたが、ルール上の制限など看護師個人の努力では解決できない事柄については1年経ってもジレンマが変化しないことが明らかになった。