第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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口演

口演5群 精神看護②

Tue. Nov 8, 2022 2:00 PM - 3:00 PM 口演会場2 (303)

座長:鈴木 美央

[口演M-5-3] 精神疾患患者における身体拘束中の看護記録の傾向と課題

木下 凪沙, 板谷 恵美, 立石 修平, 石橋 菜穂 (広島大学病院)

Keywords:精神科看護、看護記録、身体拘束

【抄録】
【目的】精神疾患患者における身体拘束中の看護記録の傾向と課題を明らかにする。【方法】A 大学疫学研究倫理審査委員会の承認を得た。期間:2019 年4 月~ 2020 年3 月。対象:A 大学病院B 病棟の精神疾患患者27 名。身体拘束を実施した全期間の看護記録612 件。分析方法:看護記録に関する文献を基に倫理的な表現や行動制限最小化の観点から独自に調査票を作成した。適切に記載ができているを5、不適切な記載を1 とし5 段階リッカート尺度で評価し得点化した。分析はマンホイットニーU 検定、Kruskal-Wallis 検定を用いた(p < 0.05)。不適切表現は原文のまま抽出し内容分析を行った。評価基準、表現事例を用いて評定者間格差の是正を図り、信頼性の確保のため研究者間で繰り返し検討を行った。【結果】男性12 名、女性15 名。平均年齢43 歳。平均入院日数37.1 日、平均身体拘束日数23.3 日。身体合併症の患者20 名。記録を行った看護師15 名。下位尺度得点(5 点満点)は「看護師の主観による表現」4.6 点「暴言暴力に関する表現」4.9点「医療者優位な表現」4.6 点「差別的な表現」4.9 点「身体拘束の妥当性の記録」が2.8 点と最も低かったが項目間の平均点に有意差は認めなかった。入院日数、時期、精神疾患による得点の平均に有意差は認めなかった。不適切な身体拘束の妥当性の表現について「抽象的な表現」「身体拘束の目的の記載がない」「本来の目的と異なった内容の記載がある」「身体拘束開放観察中の記録として不十分」のカテゴリーと5 つのサブカテゴリーが抽出された。不適切な倫理的表現として「看護師の主観が反映され客観的事実を省略している」「看護記録が医療者優位な表現となっている」のカテゴリーと6 つのサブカテゴリーが抽出された。サブカテゴリーは≪看護師の主観が入り患者の行動言動を適切に表現できていない≫が29% と最も多かった。【考察】「身体拘束の妥当性の記録」の得点が低かった要因として①慣例的な記録の習慣②身体拘束早期解除の意識が低い③記録方法の知識不足が考えられた。不適切な倫理的表現になった要因として①疾患の特性上患者の同意を得た医療が困難②患者の状態について曖昧な表現を用いる傾向があると考えられた。疾患の特性をふまえ、患者の尊厳や倫理的感受性を高めるための継続教育が重要であり長期の身体拘束の抑止力になり得ると考える。