第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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口演

口演6群 自立を目指した日常生活の援助

Tue. Nov 8, 2022 3:30 PM - 4:30 PM 口演会場2 (303)

座長:長坂 奎英

[口演M-6-3] 地域在住高齢者の嚥下機能と栄養状態との関連

冨田 尚代1, 森崎 直子2 (1.兵庫大学看護学部看護学科, 2.姫路大学看護学科)

Keywords:地域在住高齢者、自立高齢者、嚥下機能、栄養状態、要介護予防

【抄録】
【目的】地域在住高齢者の嚥下機能と栄養状態の現状を明らかにし、それらの関連性を分析することを目的とした。【方法】2018 年10 月に自己記入式質問紙を用いた横断的調査研究を行った。対象は65 歳以上の要介護認定を受けていない地域在住高齢者である。調査項目は対象の基本属性、口腔環境、嚥下機能、栄養状態であった。基本属性は性別、年齢、世帯形態で、口腔環境は歯痛の有無、歯肉トラブルの有無、口腔乾燥感の有無、義歯状態とした。嚥下機能は地域高齢者誤嚥リスク評価指標(DRACE)で評価した。栄養状態は簡易栄養状態評価表(MNA-SF)で評価した。得られたデータは、統計ソフトIBM SPSS ver25 を用いて分析した。分析における有意水準は0.05 未満とした。対象者に研究方法、匿名性、個人情報の保護等の説明を口頭及び書面で行い、同意を得た。【結果】157 名に質問紙を配布し、128 名から回答が得られた(回収率81.5%)。対象の平均年齢は76.6 ± 5.5 歳であった。歯痛がある者19 名(14.8%)で、歯肉トラブルがある者33 名(25.8%)、口腔乾燥感がある者43 名(33.6%)であった。DRACE の平均総スコアは3.1 ± 3.0 点であり、総スコア3以上の『嚥下機能低下リスクあり』に該当したのは58 名(45.3%)であった。嚥下機能低下リスクの有無は口腔環境と有意な関連を認めた(P<0.05)。MNA-SF の平均総ポイントは11.2± 1.6 ポイントで、『栄養状態良好』63 名(49.2%)、『低栄養のおそれあり』59 名(46.1%)、『低栄養』3 名(2.3%)であった。DRACE とMNA-SF の関連性をχ2 検定を用いて分析したところ、有意差は認められなかった(P<0.08)。『低栄養』に該当した3 名は、いずれも『嚥下機能低下リスクあり』だった。【考察】地域在住高齢者の4 割以上に嚥下機能低下リスク、栄養状態の低下があると考えられる。嚥下機能低下は低栄養状態につながりADL 低下、自立度にも影響を及ぼし生活の質の低下を招くことも予測される。高齢者の嚥下機能を保つことは健康維持だけでなく自立度、生活の質の維持、さらには生命の維持にも影響する。要介護度が高くなるほど栄養状態が悪化していることが報告されており高齢者の栄養状態は自立度だけでなく、生命予後にも影響を与える重要な要因である。要介護状態への予防として高齢者が住み慣れた地域で、自立した健康な生活を送るには、身体の基本である栄養状態を維持、改善することは重要な課題であり早期から高齢者の栄養状態を適切に把握していく必要性がある。