第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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特別講演

特別講演2 ICTを活用した看護職の新たな活動モデル
~地域を基盤とした重症化予防、高度実践看護~

Tue. Nov 8, 2022 2:00 PM - 3:00 PM 第1会場 (コンベンションホールA・B)

座長:鎌田 久美子

講師:森山 美知子

[SL2-1] ICTを活用した看護職の新たな活動モデル

~地域を基盤とした重症化予防、高度実践看護~

森山 美知子 (広島大学大学院医系科学研究科成人看護開発学教授)

【抄録】
 問題提起:医療・介護保険サービスの質と量を適切に保ち、かつ国民の健康寿命の延伸と費用抑制を両立させ、皆保険制度を維持するためにはどのような方法論があるのか。
 現在の医療は、病気や介護が発生してから対応する「リアクティブ(反応型)」医療である。これに対して、医療保険者/ 自治体などが有する健康関連データや医療機関の診療情報などを活用して、疾病や障害のリスクのある人々を抽出し支援を行う「プロアクティブ(積極的な予防対応型)」ケアに速やかに切り替えていく必要がある。
 この中で、看護師(特に高度実践看護師)は、ケア・コーディネーションの中核を担う。ハイリスク者を抽出し、ニーズアセスメント、倫理調整、サービス調整(サービスの最適化)、そして患者(患者予備群)・家族への教育を行うことで、その患者(患者予備群)の疾病・介護の発症、重症化を防ぐことが可能となる(高度ケースマネジメント)。ここに適切に、プライマリ・ケアを中心としたかかりつけ医療チームが連携することで、病気・介護の発症・重症化を回避できるのである。
 現在、国は、健康に関連するデータベースを突合させ、またマイナンバーカードに個人データを集約することで、人々が「健康を自身で責任をもって管理できる」ように推進している。誕生から死に至るまで、成長発達段階に応じて特徴的に発生する健康問題や、小児期発症慢性疾患など生涯にわたって対応を必要とされる疾病もある。これらに対して予防的に、継続してケアを提供していく仕組みの構築が必要なのである。われわれ看護界は、こういった健康問題に対応できる看護技術を有している。
 現在、健康の社会的決定要因に着目することの重要性が指摘されているが、地域には、安定した暮らしを支えるために必要な資源が圧倒的に不足している。難病、高齢独居世帯や介護離職、精神疾患や発達障害、閉じこもり、ホームレスなどの貧困や社会的弱者への看護など、私たち看護職は「病院に勤務する」という発想から抜け出し、サービスを創造・構築して、地域で人々が最期まで安心して暮らせるために、もっとイノベーションを起こす必要がある。ICT 技術を活用した遠隔看護技術も重要となる。
 このようなプロアクティブなケアが可能となる、新たなヘルスケア提供システムの構築について、われわれの実践をベースに提案してみたい。