第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 大阪

講演情報

口演

口演18群 家族看護

2023年9月30日(土) 13:15 〜 14:15 口演会場2 第7会場 (1004+1005)

座長:加藤 久代

[口演O-18-3] 重度の褥瘡患者を抱えた家族の介護力向上につながった訪問看護師の指導・関わりの一考察

大喜田 光二 (洛和会訪問看護ステーション音羽)

キーワード:重度の褥瘡、家族の介護力、家族支援、在宅療養、訪問看護師の関り

【目的】厚生労働省は在宅褥瘡対策に力を入れ、日本の褥瘡対策は病院・施設から在宅へと大きくシフトしている。今回、仙骨部にStage Ⅲの褥瘡がある症例を経験した。当初は、A事業所の訪問看護が介入していたが、褥瘡はあまり改善せず、介護者である妻も褥瘡処置には介入していなかった。その後、B 事業所が担当となり、指導や相談を行いながら、妻にも褥瘡処置に関わってもらった結果、褥瘡に改善が見られた。そこで、本研究の目的は、本事例を通して、重度の褥瘡患者を抱えた家族の介護力向上につながった訪問看護師の指導・関わりを明らかにすることである。【方法】訪問記録、褥瘡記録、家族からの聞き取りなどからデータを収集した。そこから得られたデータを基に、訪問看護師の関わりをアルバート・バンデューラの自己効力感の4つの構成要素を用いて分析した。本研究に際しては、所属施設の倫理審査委員会で承認を受けた。研究対象者の家族へは本研究について口頭と文書にて説明し十分な理解と納得を受けた上で、同意書の署名をもって同意を得た。【結果】妻が褥瘡処置に不慣れな段階では、訪問看護師は妻のできていないことは静観し、できていることに労いの言葉かけをしながら、相談や指導を行った。また、訪問開始直後に、妻は、訪問看護師から他の利用者には家族も褥瘡を処置しているところがあるということを聞いたことが、褥瘡処置をするきっかけになったと述べた。妻が褥瘡処置に慣れた段階では、妻は自らの褥瘡処置により褥瘡が治癒していることを認識し、褥瘡処置を楽しんでいた。訪問看護師は、妻に休息も必要であることを説明し、妻は利用者のレスパイト入院を活用して休息を取っていた。【考察】訪問看護師が妻に他の利用者の家族のことを話したことが代理体験となり、妻の褥瘡処置のきっかけとなった。妻は自らの処置により褥瘡が治癒していくことを経験したことが制御体験となり、自己効力感を高めていった。また、訪問看護師が訪問を通して労いの言葉をかけたことが社会的説得となり、自己効力感が強化され、妻は介護のモチベーションを保つことができた。そして、介護する中で息抜きも大切であることを説明したことで、妻は息抜きができ、ネガティヴな感情傾向を減少させたことは生理的・感情的状態に影響し、自己効力感の状態を更に維持することが出来たと考えられる。