第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 大阪

講演情報

口演

口演4群 看護職の心の働きとその対処①

2023年9月29日(金) 10:15 〜 11:15 口演会場2 第7会場 (1004+1005)

座長:立野 淳子

[口演O-4-4] 新任看護師長の役割ストレスとストレスコーピングの様相

中村 麻弥, 角野 雅春 (府中病院)

キーワード:新任看護師長、役割ストレス、ストレスコーピング、役割遂行

【目的】看護師長には、マネジメント力が期待される一方で、業務遂行には多くのストレスを伴うことが指摘されている。本研究の目的は、新任看護師長が役割移行における役割ストレスとストレスコーピングの様相を明らかにし、新任看護師長のメンタルヘルスを良好に維持できる支援の在り方を検討する示唆を得ることを期待する。【方法】研究デザインは質的帰納法研究とし、看護師長3 名(看護師長歴平均4.3 年)に半構成インタビューを実施し、質的記述的に分析をした。内容は就任初年次に看護管理者として感じた役割ストレスや対処行動等から構成した。得られた情報から逐語録を作成し、Krippendorff の内容分析を参考にコード化し、意味内容の類似性と相違性に沿って分類しサブカテゴリー、カテゴリー化した。すべての過程において、質的研究の経験のある研究者と検討を重ねカテゴリーの信頼性の確保に努めた。看護部研究倫理審査委員会の承認後、研究の趣旨、方法、匿名性の保持、自由意思での参加、プライバシーの保護等について説明し同意を得た。【結果】新任看護師長の役割ストレスとストレスコーピングは、〈看護管理者としての自覚を持つ〉〈自分自身の職務を担うという心がまえをする〉〈本質的な役割を見出すまでに苦悩を乗り越えていく〉〈成果に積極的に向かう肯定的な姿勢を保つ〉〈看護師長として信頼される〉であった。【考察】新任看護師長は就任後、日常的に求められる不確かな役割に本質的な職務を見出すことに悩むと同時に、看護師長としての自覚や心がまえを持ちはじめる様がみられた。この自覚や心がまえが肯定的な姿勢として役割ストレスへのコーピングとして機能していたと考える。また、新任看護師長は看護実践者から看護管理者へと役割の変化に対して不安定さという役割ストレスを感じながらも、これまでの豊富な看護経験を活用し、看護管理者としての経験を重ねていた。新任看護師長は、このような看護管理者および看護実践者の両者の役割を担うというプレイングマネジャーを通して看護管理者の役割を認知していくことでコーピングを働かせていたと考える。このように、新任看護師長の業務内容や業務負担においては役割の受け入れの程度に応じた調整の必要性が示された。また看護実践者から看護管理者への移行過程において新任看護師長が認識する役割の重みに対応したやりがいや満足度に関わるメンタルヘルス支援の重要性が示された。