第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 大阪

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口演

口演6群 看護の質向上のための取組み

Fri. Sep 29, 2023 3:00 PM - 4:00 PM 口演会場2 第7会場 (1004+1005)

座長:大江 理英

[口演O-6-5] 治療前食事制限指導の動画教材の効果と課題

―ドナベディアンモデルの枠組みを用いた評価―

藤原 智恵, 二階堂 名奈 (伊藤病院)

Keywords:動画教材、食事制限指導、ドナベディアンモデル

【目的】A 病院医療相談室では、放射線ヨウ素内用療法前に必要な食事制限の患者指導を看護師が担っている。件数は年間1400 件であり、これまではパンフレットをもとに対面での口頭説明をおこなっていた。今回、効率・効果的な患者教育を目指して、説明内容の一部を動画化し業務改善をおこなった本取組みについて評価する。【方法】医療の質評価において広く用いられているドナベディアンモデルを参考に「構造(ストラクチャー)」「過程(プロセス)」「結果(アウトカム)」の3 つの側面から評価した。倫理的配慮として、患者を対象として実施したアンケート調査は、院内の倫理委員会の承認を得て実施しアンケートは無記名とし個人が特定されないよう配慮した。【結果】『構造』看護が提供される構成要因とした。指導にかかわる看護師数は7 名、配属年数平均約3 年、全員が看護部内の部署異動経験者であった。『過程』ヨウ素制限指導のプロセスや実際におこなった業務改善の内容とした。「ヨウ素制限をおこなう方へ」のオリジナル動画を作成した。導入前後の対面対応時間の調査および、導入前後で患者理解度の変化を確認するため、患者対象のアンケート調査を実施した。『結果』動画導入前後による患者と医療者の変化とした。対面での説明時間は、動画導入前平均8.3 分から導入後は平均4.4 分と短縮、アンケートでは患者の理解度を5 つの項目から確認し、おおむね9 割が「ほぼ理解できた」という答えであった。【考察】動画導入前の説明にかかる時間は実施者により個人差が大きかったが、導入後の説明時間は短縮され個人差も少なくなったことから、説明内容が統一化され、説明の均質化につながった。また、アンケート結果よりおおむね9 割が理解できたと総合的によい評価が得られたことから、動画教材を用いた患者指導は効率・効果的な視点から有効であった。患者指導の成果を評価するには、患者側の一側面のみの評価だけでなく業務をとりまく環境全体、つまり看護師によって運営・展開される業務体制の評価が必要である。このことから、ドナベディアンモデルによる三側面からの評価の枠組みを用いて系統的に振り返ることは有効といえる。今後も動画教材やデジタル化の長所短所を理解したうえで活用すると同時に、患者のニーズに応じた看護の提供についてさまざまな視点で評価していくことが課題であると考える。