第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 大阪

講演情報

口演

口演9群 ポストコロナ社会の看護への示唆②

2023年9月29日(金) 15:00 〜 16:00 口演会場3 第8会場 (1006+1007)

座長:須東 光江

[口演O-9-2] COVID-19 感染症の看護実践振り返りの効果

市原 しのぶ, 木村 めぐみ, 伊藤 真未 (関西電力病院)

キーワード:COVID-19、振り返り、自己効力感

【目的】2022 年7 月頃からCOVID-19(以下コロナ)患者数が急激に増加し、2 か月間で延べ525 名の患者を受け入れた。その後、患者数が落ち着いた2022 年9 月に振り返りを行った。患者数増加時の看護実践を振り返ったことにより、自分達の取り組みを前向きに捉える過程が明らかになったため、報告する。【方法】B 病棟で勤務する看護師26 名を対象に、2022 年9 月に6 ~ 7 名を1 グループとして振り返りを実施し、結果から逐語録を作成してカテゴリー分類をした。また、12月には振り返りでの意見を基に再度個別で聞き取りを行いコードを抽出した。倫理的配慮として、A 病院倫理委員会の承認を得た。また、対象者に研究の目的、振り返りや聞き取りの結果を個人が特定されないよう処理し利用したい旨を説明し同意を得た。【結果】振り返りは26 名が参加し、《取り組みの成果》《今後の課題》の2 つのカテゴリーが抽出された。《取り組みの成果》は、看護ケアや効率性を含む5 つのサブカテゴリー、《今後の課題》は、不安など3 つのサブカテゴリーで構成されていた。聞き取りは10 名に行い、「これまでは頑張るしかないと思うしかなかったが、頑張りすぎないで良い、自分達の考えを言って良いと思えた」など、自分達の考えの変化を実感する発言や、「クラスターを起こさないことに自信を持てる」などの発言があった。【考察】前向きな意見の背景は、コロナの動向により患者数や看護必要度が大きく変動する中で、環境調整や行動変容をしながら病棟の役割を発揮してきたという経験の積み重ねを成功体験として認識できたからではないかと考える。管理者は、スタッフがコロナ患者を担当する日々の中で身体的・精神的負担を感じていると予測していたが、振り返りでは異なるカテゴリーが抽出された。これまでの患者受け入れに伴う困難を克服したという自信や自己効力感が、乗り越えられたという肯定的な発言をもたらし、どのように乗り越えるか自ら考え取り組むという能力発揮に繋がった。また、「自分達の考えを言って良かった」などの発言は、スタッフの自信の高まりを示したといえる。今回の看護実践の振り返りは、自らの実践を肯定的に捉えるために効果的であり、日常的に考えを言語化できる風土を醸成することが今後の課題である。