第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 大阪

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口演

口演9群 ポストコロナ社会の看護への示唆②

Fri. Sep 29, 2023 3:00 PM - 4:00 PM 口演会場3 第8会場 (1006+1007)

座長:須東 光江

[口演O-9-3] COVID-19 第5 波に見られる高度医療開始までの呼吸器関連症状の変化

―看護師の観察結果による傾向の分析―

馬嶋 巧1, 川崎 久美子2, 齊藤 克哉2 (1.東京都立松沢病院, 2.東京都立多摩総合医療センター)

Keywords:COVID-19、重症化、症状

【目的】A 施設はCOVID-19 中等症以下の受入施設として、軽症から中等症の患者にCOVID-19 の専門的医療を提供した。第5 波の感染拡大時期に入院した中等症以下の患者を対象に、体外式膜型人工肺、人工呼吸器、ネーザルハイフロー又は6l/分以上の酸素を開始するまでの呼吸器関連症状の変化及び傾向を明らかにする。【方法】実態調査型研究(量的・非介入型研究)。対象者はA 施設に2021 年7 月1 日から9 月30日の期間に入院した146 名の内、COVID-19 の症状悪化によりB 病院へ転送した患者51 名。診療録から酸素投与量、バイタルサイン、状態悪化後の経過、BMI、喫煙歴、基礎疾患、観察項目などの必要な情報を後ろ向きに収集、分析した。両病院の倫理委員会の承認を得た。【結果】対象者51 名の男女比は男性が女性の2 倍であり、基礎疾患がある患者は19 名(37.3%)、喫煙歴あり24 名(47.1%)であった。49 名(96.1%)は酸素投与量の増加を認め、入院後8 時間に酸素投与量が最大7l 増加した患者は2 名であった。自覚症状は咳嗽あり50 名(98%)、喀痰あり43 名(84.3%)、呼吸困難感あり48 名(94.1%)、全身倦怠感あり47 名(92.2%)であった。観察項目は、頻呼吸(25 回/分以上)32 名(62.7%)、高熱(38.0度以上)40 名(78.4%)、肺雑音25 名(49%)であり、半数以上に呼吸症状の悪化が認められた。B 病院への転送前24 時間の症状の出現は、頻呼吸11 名(21.6%)、高熱2 名(3.9%)、咳嗽2 名(3.9%)、喀痰3 名(5.9%)、肺雑音6 名(11.8%)、呼吸困難感2 名(3.9%)であった。BMI の全体平均26.7 に対し、体外式膜型人工肺を使用した患者3 名のBMI平均は36.7 であった。【考察】第5 波におけるCOVID-19 の患者では、無症状のまま突然酸素需要だけが上昇することがあり、特定の症状の有無を指標として状態悪化を判断することは困難と考える。一部の症例では、8 時間以内に急速に酸素投与量の増加がみられ、呼吸状態改善のためには迅速かつ的確な対応を要したことから、重症化リスク因子の基礎疾患、喫煙歴、BMI 等の情報を把握することが重要と考える。また無症状であっても容態悪化の危険性を予測し、労作時との比較や全身の観察を強化し、症状変化の早期発見に努める必要がある。