第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 大阪

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2022年度日本看護協会調査研究報告

2022 年度日本看護協会調査研究報告

Sat. Sep 30, 2023 10:30 AM - 11:30 AM 第3会場 (1003)

座長:市村 尚子

登壇者:南平 直宏・岩澤 由子・宮脇 英恵

[RR1-4] 「助産師の専門性発揮のあり方に関する実態調査」報告

宮脇 英恵 (日本看護協会健康政策部助産師課)

【目的】
 近年、少子化に伴う分娩取扱施設の減少等、出産を取り巻く環境が変化しており、助産師には、一層の専門性の発揮が求められている。助産師による支援のさらなる充実にむけて、助産師の専門性発揮に係る現状や課題を把握し、本会の政策提言等に役立てることを目的に、2022 年に「助産師の専門性の発揮のあり方に関する実態調査」を実施した。
【方法】
 ①本会助産師個人会員(27,206 人)、②分娩取扱診療所(968 施設)、③全国すべての病院の看護管理者(8,165 施設)を対象とした横断的質問紙調査を実施した。①・②はWeb 調査、③は本会が毎年実施する「病院看護実態調査」の一環として行った。また、本調査は、生涯学習等体制構築プロジェクト「今後の調査研究体制のあり方」の一環として企画・設計・分析を実施した。なお、本調査は、公益社団法人日本看護協会研究倫理委員会により承認されている(2022-03)。
【結果】
 産婦人科以外の診療科も含む混合病棟(以下、産科混合病棟)に勤務する助産師は前回調査 から10 ポイント以上増加した。産科混合病棟では、他科患者と妊産婦を同時に受け持つ状況があり、産科以外の患者のケアに対応するために、正常分娩の産婦のケアを中断したことが「いつもある」との回答が、連続モニタリングや5 分間隔で胎児心拍数の確認が推奨されている分娩第2 期でも16.2% みられた。また、9 割近くの助産師が、「院内助産に携わったことがない」と回答したが、個人調査で正常分娩第1 期~第4 期における助産師の裁量と判断の実態をみると、17 項目中16項目が助産師の裁量と判断で実施されていた。「助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)」に掲げるウィメンズヘルス関連業務11 項目のうち、半数以上の助産師が実施しているのは3 項目にとどまった。なお、「日本看護協会看護職賠償責任保険」への加入率は62.8% だった。
【考察】
 産科混合病棟では、他科患者のケアのために正常分娩の産婦へのケアの中断が発生しており、助産師が専門業務に安全に携われていない状況が明らかになった。院内助産については、実施状況と助産師の裁量と判断に関する回答との間に乖離があり、院内助産を明示していない施設でも院内助産の定義に沿った助産師主導のケアが提供されていることが示唆された。また、助産師の安心な働き方を支えるためにも、賠償責任保険への加入について一層の推進を図る必要がある。出産を取り巻く環境が変化する中でも、助産師が専門性を発揮し、すべての女性とその家族が身近な地域で適時・安全に必要なケアが受けられる体制の整備が必要である。